嫉妬からくるネガティブモードに注意
10月になり、後期の授業がはじまったわけですが、その前に「アレ」がありましたよね? そう、 成績発表です! 好成績にガッツポーズする者あり、思わぬ不可を食らって顔面蒼白の者あり……みなさんの悲喜こもごもが目に浮かぶようです。
それにしても、不思議だと思いませんか? 大学というのは、一応「同じくらいの偏差値集団」によって構成されているはずじゃないですか? それなのに、実際はびっくりするほど成績に開きがある。もちろん、同級生の中には、上位校に落ちちゃったすべり止め組も、記念受験のつもりが合格しちゃった棚ぼた組もいるんですが、だとしても「こんなに差が開くもんなの?」と思わざるを得ない。かつてのわたしも「入学してたった半期でこの差かよ!」と憤ったものです。
それでも、いつもの自分だったら「悔しい! 巻き返してやる!」と思えたんでしょうが、長きにわたる受験戦争を戦い抜き、完全に燃え尽き症候群だったので「やる気なんてもう起こんねえし(泣)」というのが本音。しかも大学の勉強は、あくまで「研究」であり、知的な探求であるからして、ドリルを解けば解くほど賢くなる、というものでもない。やる気だけあってもどうにもならないのです。
そうなるともう、やる気のない自分を棚に上げて、デキる学生にひたすら嫉妬するだけの学生生活になりかねない。教員の目から見ていると、自信喪失からくるこのネガティブモードが、ものすごく厄介なんです。
たとえば、少人数講義やグループワークの場で、決してコミュ障というわけではないのに、授業に出て来なくなる学生が必ずいます。ちょっと意外に思うかもしれませんが、彼らの多くは、高校まで「優等生」で通ってきた人です。彼らは、それまでの狭いコミュニティではつねにナンバーワン。つまり、優秀じゃない自分を知りません。ですから、大学に入って、ほかの学生がサラっとおもしろい発表をしたり、ハッとするような発言をしているのを見ると、ものすごくショックを受ける。それは一種のカルチャーショックであり、本来であれば、自分を奮い立たせるいい材料になるはずなのですが、プライドを傷つけられたと感じてしまって、嫉妬まみれのネガティブモードに突入してしまうと、もうフェイドアウトしかない!となってしまう。こういう学生を救うのはなかなか難しいというのが正直なところです。
他者との違いは「上下」ではなく「左右」でイメージせよ
優秀じゃない自分を受け入れたくない気持ちはわかりますが、教員から見れば、学生が気にしている能力差なんて、大したことありませんし、気にするだけバカらしいものです。だって、優秀に見える学生だって、別の授業、別のグループワークの場では、べつに大したことなかったりするんですから。ひとつの授業、ひとつの教室で発生した優劣に一喜一憂するのは、愚の骨頂。とりあえず落ち着けと言いたいです。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。