—ゾンビ先生の哲学授業 第8回「帰納法と演繹法」後編—
先生 よくわからん奴じゃの……。情緒の暴走はよしなさい。なにごとも中庸が大事じゃぞ、中庸が。まあ話を進めるが、三段論法のように、頭を使い順序立てて物事を思考する方法を「演繹法」と言うんじゃ。デカルトの方法的懐疑も演繹法じゃな。
ひろ 「我思うゆえに我あり」の方法的懐疑が?
先生 方法的懐疑は、疑いようのない真理を第一原理と定め、そこから順番に、一段一段せいろを積むように理論を重ねていく考え方じゃ。方法的懐疑や三段論法、あるいは数学の定理のように、理論を組み立てて理性的に考えていく方法を演繹法と呼ぶのじゃ。
ひろ うーん、もうひとつスッキリしないなあ。ハッキリしないなあ演繹法。
先生 演繹法は、帰納法と対比させればわかりやすくなる。帰納法の概念を学んでから、「帰納法じゃない方が演繹法」と覚えるとしっくりくるはずじゃ。
ひろ じゃあ帰納法をお願いします! 帰納法を勉強するなら、今でしょ! 帰納法なのに昨日でも一昨日でもなく、今でしょ!!
先生 ガブリッ!!
ひろ ノオオオ——ッッ(涙)!!!
先生 ……安心せい。甘噛みじゃ。帰納法とは、西暦1600年前後にイギリスの哲学者ベーコンによって提唱された認識の手法じゃ。演繹法が理論や思考を重んじるのに対し、帰納法では経験こそがすべてとみなす。経験や観測、実験など現実的なデータから共通の法則を見つけようとするのが帰納法じゃ。……例えが必要じゃな?
ひろ お願いしますよう! 草木に水が必要なように、韓流ドラマに身内の不幸が必要なように、ひろには例え話が必要なんです!
三段論法で「田中珈琲店のクリームソーダは美味しい」と証明するには?
先生 わしも評判を聞いたんじゃがな、ここのクリームソーダは美味しくて有名だそうじゃな。
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