デカルトの「方法的懐疑」という思考法は結局グダグダの理論だった

「疑いようのない絶対に確実な真理」を探し出し、それを第一原理に掲げてそこから思考を積み重ねていこう、というデカルトの「方法的懐疑」。しかし、青年ひろは、エリ先生からその説明を受ければ受けるほど、その理論が破綻していくことに気づく。書籍『(推定3000歳の)ゾンビの哲学に救われた僕(底辺)は、クソッタレな世界をもう一度、生きることにした。』より特別連載。

—エリ先生の哲学授業 第2回「デカルトと方法的懐疑」後編—

ひろ でも!! 「方法的懐疑」の意味はわかっても、結局真理というか、疑えないものがなんなのかがわかりません。見るもの全部「見間違いかもしれない」って疑うし、聞くものも全部「聞き間違いかもしれない」って疑うんでしょう?

エリ そうよ。匂いも、味もね。あんたのバイト先で料理を食べた客が「美味しい」「いい香り」と感じても、それも絶対確実な真理ではないはずよ。疑いの余地は十分ある。

ひろ 失礼な! うちで出している肉はA5ランクの国産黒毛和牛なんですよ? 美味しさに間違いはないと自信を持って言えますよ!

エリ その黒毛和牛にも疑いの余地は十分ある。

ひろ そうそう。A5ランクの国産だなんて言ってるけど、実はアメリカ産の安い肉なんですよね。注射器で牛脂を入れればきれいな霜降りができるし、それで薄切りにしちゃえば全然国産と見分けがつかなくてみんな見事に騙されるんですよねってほんとに失礼だなっっ!!! そんなことはない!!! うちは食品偽装なんてしてませんから!!!

エリ たとえあんたはそのつもりでも、あんたが店から騙されているという疑いの余地はある。あんたの店がそのつもりでも、あんたの店がそもそも業者に騙されているという疑いの余地はある。業者がそのつもりでも、そもそも業者も牛に騙されているという疑いの余地はある。牛だと思って育てていたものが実は本物の牛ではなく、何者かによって人工的に作られた哲学的ゾンビ牛かもしれないんだから。

ひろ そんなこと言ってたら、本当に疑えないことなんてなにもないじゃないか。

1+1という計算は本当に正しいのか?

エリ そうやって、デカルトはあらゆるものを疑ったの。「1+1=2」という計算すら、「神様が自分を騙して1+1=2であると思い込ませているのかもしれない」と疑ったの。

ひろ どういうこと!? 思い込ませるもなにも、1+1=2じゃないですか! どう考えたってこれは間違いようがない!

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ゾンビの哲学」に救われた僕は、クソッタレな世界をもう一度、生きることにした。

さくら剛

さくら剛の超・哲学入門! 「とっつきにくくて、わかりにくい」、「でも、人生の役には立ちそう」。本書は、そんなやっかいな哲学を「冴えない青年“ひろ”が、古代ギリシア生まれの哲学者“ゾンビ先生”から学んでいく物語」です。哲学とは? この世...もっと読む

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