「短眠」は、健康をむしばむ
眠れない状態が長く続いたとき、「体がだるく重い感じがする」「階段を駆け上がると動悸がする」「なんとなく気分が憂うつだ」「仕事のモチベーションが上がらない」などと感じたことはありませんか?
慢性的な睡眠不足は、あなたの心身を確実にむしばんでいきます。
睡眠時間と健康との関連でよくいわれるのが、睡眠時間は長すぎても短すぎてもよくないということです。実際、コレステロールも血圧も、睡眠時間と数値のグラフはほとんどがU字カーブになっていて、睡眠時間の長いグループも短いグループも、どちらも数値が悪くなるというデータになっています。
こうしたデータがテレビや雑誌、インターネットなどで取り上げられて、長すぎる睡眠時間がよくないなどといわれることもあります。
しかし、本当に長時間睡眠は健康によくないのでしょうか?
この疑惑を明らかにするため、過去の論文を集めて検証し直した研究者がいますが、長時間睡眠のグループと、7〜8時間睡眠のグループを統計的に比較したところ、両者に大きな差はないという結果が出ました。長時間睡眠が病気のリスクになるわけではなさそうです。
また、睡眠不足で数値が悪化しているのではなく、何かの病気の前触れで睡眠時間が長くなっている可能性も指摘されています。
どちらかというと、睡眠時間が短いほうが生活習慣病のリスクが高いという結果が出ているので、やはり、短すぎる睡眠、つまり睡眠不足が健康にはよくないと考えてよいでしょう。
血糖値についてはさらに細かな調査が行なわれていますが、睡眠時間が短くなると数値が高くなる傾向があります。
詳しいメカニズムはわかっていないのですが、いつも8時間睡眠を取っている20代の人を4時間で起こし、8時間のときと同じカロリーの朝食をとってもらって血糖値を計ったところ、朝食後の血糖値は4時間睡眠のときのほうが高くなっていました。
また、アメリカの研究報告では、5時間しか眠っていない人は、7〜8時間の睡眠を取っている人より糖尿病の発症リスクがおよそ2倍になるという研究報告もあります。睡眠時間を削ると食欲をコントロールするホルモン(レプチンやグレリン)のバランスが崩れて過食に走りやすいというデータもありますし、睡眠不足が私たちの体にダメージを与えることは間違いありません。
高血圧や糖尿病は生活習慣病の代表です。中高年の人だと、健康診断で「血圧が高めですよ」「血糖値が高いです」などと指摘されたことがあるかもしれません。その原因の一端を担っているのが、睡眠不足なのです。
高血圧や高血糖、脂質異常は心臓病や脳卒中のリスクを高めます。働き盛りでの突然死を避けるためにも、睡眠をしっかり取りたいものです。
眠っているときの「脳掃除」「体メンテナンス」
生活習慣病だけではありません。
睡眠不足は脳の老化スピードも速めます。