世の中に、こんなステキなトウモロコシがあるなんて

甘くておいしいトウモロコシを作るためには、1株で1本を育てるのが基本なんだそう。とはいえ、幼いトウモロコシを間引きたくない金田さんは、タネ売り場で1株から約2本収穫できる品種と出会います。しかし、順調に育つトウモロコシに心躍らせていたのも束の間、またもやあの敵が現れてしまったようです。

間引きがつらい

トウモロコシは、贅沢な野菜だ。

ミニトマトなら、1房で市販のミニトマト1パック分くらいはゆうにとれるし、ピーマンは1株植えれば100個くらい実る。

ところがトウモロコシは、1本入魂。ほうっておけば2~3本は実るが、養分を集中させて甘くするために、1株に1本しか育てないことが推奨されているのだ。

残りは幼いうちに間引いてしまう。それが、ベビーコーンやヤングコーンと呼ばれる超ミニサイズのトウモロコシだ。

とれたてのベビーは香りがよく、茹でたり揚げたりすると、甘くておいしい。でもやっぱり、大人のトウモロコシの味を思うと、残念でならない。

「育てばあんなにおいしくなるものを、間引いてしまうなんて……」

トウモロコシが大好物の私は、この間引きが、どの野菜の間引きよりつらいのだ。

けれど夫は、教科書通り1株1本にしたがる。だから毎年、「間引いてよ」「間引きたくない」で、もめる。

「最初からとれる数が決まってるなんて、つまらん」が私の持論で、

「それを確実に収穫するのが難しいんでしょ」が夫の言い分だ。

抵抗しても、結局は間引くことになる。不愉快だが、そのほうがたしかにおいしい気がするからしかたない。


いやだいやだと先延ばしにしているうちにベビーが3歳児くらいに育ってしまい、硬くてまずくなります。自分のせいながら、腹が立つのです。

1株から約2本収穫

それは畑を始めて3年目。ホームセンターのタネ売場で、私はその年のトウモロコシを選んでいた。

1年目に育てたのは「おひさまコーン7」という品種だった。ハクビシンに大半食われてしまったが、その甘さには目玉が飛び出そうになった。

翌年選んだのは、「おひさまコーン88」。

「7から88なんて、桁違いの甘さに改良されたんだな」と思ったら、単に“タネまき後、約88日で食べ頃”ということらしい。

約88日って、約90日じゃいけないのか? と思うが、実際、トウモロコシの味はその数日でかわってしまうほど繊細だ。

そして3年目、私は2つの品種のタネを手に取った。

「今年は、『味来(みらい)のピクニックコーン』と『カクテル84EX』を育てるよ!」

タネまき当日、意気揚々とタネ袋を振る私に、お隣のN村さんが「そりゃダメだ」と注意した。

「トウモロコシは、違う品種をそばに植えると花粉が混ざって品種の特性がでないんだよ」

そういえば、野菜作りの教科書にもそんなことが書いてあったな。

しょうがない。目薬っぽい名前の品種はあきらめ、私は「味来」を採用した。タネ袋に、すばらしいことが書かれていたからだ。

“1株から約2本収穫”

世の中に、こんなステキなトウモロコシがあるなんて。タネ売場で見つけたときは、隣にいたおじいさんを抱きしめそうになったくらいだ。

1株から2本とれれば、タネ穴は20穴だから、2×20=40本。

待てよ。1穴に2株仕立てたら、2×2×20で80本だ。

「しかも、“約2本収穫”ってことは、1株から3本とれるかもしれないんだよ!」

1株1本きりと収穫量が決まってしまっていた未来が、にわかに輝き始めた。

そうなのだ、先の決まっている未来ほど退屈なものはない。人生も野菜作りも、どうなるかわからないからおもしろいんじゃないの。

なんじゃこりゃあ!?

一度に80本とれても困るので、2週間ずらして2回タネまきした「味来」は、私の愛を受けて順調に育った。


トウモロコシは、葉も美しい。
伊藤若冲が「隠元豆玉蜀黍図」という作品を残していますが、描きたくなる気持ちもわかります。

トウモロコシは風の力で受粉するが、念には念を入れよう。

美しい雌しべが出ると、私は株のてっぺんに咲く雄花を切り取り、はたきの要領で花粉を落とした。おかげで、1株2本以上、みんなそろって太ってきたのである。

そうして迎えた7月中旬、そろそろトウモロコシを食べようと思った日のこと。「暑い暑い」と文句を言いながら畑へ着いた私は、一瞬で凍りついた。

「な、なんじゃこりゃあ!?」

畑を始めて1年目にハクビシンにトウモロコシを先取りされた話は以前ご披露したが、まさかの二度目の「なんじゃこりゃあ」である。

「なんでよ!? 備えは完璧だったのに!」


こうやってネットも巻いたんですよ。もちろん、この上の部分も覆いました。

ネットの高さは2m。四方の支柱は倒されないように、杭にしばりつけた。夫が固めた鉄壁の守りは、走り高跳びでもしない限り侵入不可能だ。

無論、ネット下からのアタックも想定し、ネットの裾に細い棒を入れたり出したりして縫いこんだ上、それを止め具で土に打ち込んだじゃないか。そこは私がやったのだから、ぬかりはないぞ。

そう思っていると、黙って侵入経路を探していた夫が、ある場所でしゃがみ、ネットの裾をつまみあげた。

「あの~。ここ、あいてますけど?」

そんなとこ、もぐれるわけないだろ!

理不尽な現実
この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
シロウト夫婦のズボラ菜園記

金田 妙

毎日、採れたての新鮮な野菜が食卓にのぼる。そんな生活に憧れる人は多いのではないでしょうか。自分で野菜を作れればよいけれど、畑はないし、仕事は忙しいし、週末は遊びたいし…。それでも、思いきって家庭菜園の世界に飛びこんでみたら、おもしろい...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません