吉永小百合さんのこと

昭和から平成の芸能界を駆け抜けてきた喜劇人・小松政夫。にぎやかで元気のあった時代を自ら振り返った半生記『時代とフザケた男』を特別連載。今回は初めて女優・吉永小百合さんとドラマで共演したとき起きた甘酸っぱいエピソードです。

 吉永小百合さんはね、アタシの憧れのスターなんだ。博多に住んでた学生時代から、横浜のトヨペット勤務時代は、よく日活の映画館に足を運んだもんです。それこそ”青春の思い出”ですよ、アハハ。密かに隠れサユリストでしたからね、アタシは。

 小百合さんが主演する日本テレビのドラマ『花は花よめ』に、アタシも出られると聞いた時は、「エライ!あんたはエライ!」ってエライ人に思いましたよ、誰だかわかんないけどね。ちなみにこの番組はトヨタの一社提供でさ、何か縁を感じたもんでした。あ、そういえばアタシがその昔CM撮りした「横浜トヨペット」のコマーシャルが観たいんだよね、つい最近まで神奈川の映画館で流れてたらしいんだ、情報求むだよね。

 おっと話が横道にそれちゃった、アタシの話はいつもこうさ、まあいいか。

 えっと、『花は花よめ』は小百合さん扮する人気芸者のみどりが、ふとしたことで出会った児玉清演じる三人の子持ちの花屋に惚れちゃってね、花屋の花嫁になっちゃう奮戦記ドラマなんだよね。あの吉永小百合が芸者役と三人の母親役に初挑戦ってことで、当時は話題になったもんですよ。小百合さんは神楽坂の芸者置屋に通って所作の指導受けたり、花柳流門下で日本舞踊の稽古をしたとか。相手役の児玉清さんも、前の年に共演したドラマ『おふくろの味』でやはり共演して気心が知れ合っているから、とのご指名だもん、小百合さんも新境地に思うところあったんだね。

 小百合さんはね、険しい山頂に咲く可憐な百合の花なんですね、霞がうっすらかかっている。アタシたちは、遠くから見え隠れする百合の花を眺めて「綺麗だなあ」って遥かに想うの。そんな気分だったよね、小百合さんのイメージは。

 楽屋に行ったらさ、アタシの部屋がなんだか騒がしくてさ、見れば児玉清さんたちがくわえタバコで花札に興じている。花札はいいけどさ、なんでアタシの部屋なんだよ、まーずいぶん、随分、ズイブンね〜!なんてボーゼンとしてたら、児玉さんがくだけた調子でね、

「おー、小松クン。君も一緒にどうだい」

 誠実な花屋のお父さん、のイメージが崩れちゃった。

「スミマセン、アタシの楽屋なんで......出て行ってもらえますか」

 キチンと言ったら、児玉さんは、

「付き合い悪いなあ」

 舌打ちして出て行きましたけどね。

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この連載について

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時代とフザケた男~エノケンからAKB48までを笑わせ続ける喜劇人

小松 政夫

昭和から平成の芸能界を駆け抜けてきた喜劇人・小松政夫。昭和の一時期、宴会芸は「デンセンマンの電線音頭」か「しらけ鳥音頭」でした。学校では子どもたちが机の上に登って小松政夫や伊東四朗のマネをして踊った時代。それは「小松の親分」こと小松政...もっと読む

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marekingu #スマートニュース 3年弱前 replyretweetfavorite