個人課金ビジネスと広告ビジネスは、
売上=ユーザー数×ユーザーあたりの売上(ARPU)
の公式が成り立つという点では非常に似ています。決算で押さえるべき重要指標も、基本は、書籍『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』の4章で取り上げた広告ビジネスと同じです。
強いて違いを挙げるならば、個人課金ビジネスの売上は直接「ユーザー」からもたらされ、広告ビジネスの売上は間接的に「広告主(企業)」からもたらされることです。
また、サービス提供者は全ユーザーに課金をすると(無料でサービスを提供する場合に比べて)ユーザー数を大きくするのが困難になるため、フリーミアム型を採用しているケースも少なくありません。この場合、実質は広告型と個人課金型をハイブリッドしたビジネスモデルになります。
ゆえに、「売上」については
売上=広告売上+課金売上
という方程式が成り立ち、「ARPU」についても
ユーザーあたりの売上(ARPU)=広告ARPU+課金ARPU
という方程式が成り立ちます。
個人課金型と広告型、それぞれの長所・短所を知る
個人課金ビジネスの中でも近年特に大きく成長しているのが、継続課金型のビジネスです。
日本では、iモード全盛の時代に着メロなど複数のサービスが継続課金型のサービスで一世を風靡したことがありますが、現在の継続課金型ビジネスで世界王者と呼べる存在となっているのはアメリカ生まれの動画配信サービスNetflix(ネットフリックス)です。彼らがどのように成長してきたのかを知らずして、現代の個人課金ビジネスを語ることはできません。
そこでこの記事では、書籍執筆時点(2017年6月)で有料会員数が世界で1億を突破していたNetflixの決算を分析します。
そして、Netflixの次に注目すべきは音楽ストリーミングでしょう。動画配信業界は、動画という大容量のデータを配信するためのコストが大きいためか、書籍の「4章:広告ビジネス」編で取り上げたAbemaTVのような特例を除き、ほとんどのプレーヤ ーが個人課金型モデルになっています。一方の音楽ストリーミング業界は、広告型と個人課金型がいまだ混在しており、どちらが将来有望かという優劣もまだついていません。
それぞれどんな長所と短所があるのかを明らかにするために、書籍では「個人課金型」のSpotify(スポティファイ)と「広告型」のPandora(パンドラ)の決算を比較しています。
急成長したNetflix「5つのすごいポイント」
では、先ほど「現在の継続課金型ビジネスで世界王者と呼べる存在」と書いたNetflixの決算分析を通じて、さっそく個人課金型ビジネスの成長戦略を見ていきましょう。
Netflixとは、定額の月額課金で映画やドラマなどの動画をストリーミングで観ることができるサブスクリプション型(定額制の月額課金)サービスです。近年は世界展開に注力しており、2017年4月に全世界の有料会員数が1億を突破しました。
ここでは、どんな過程で成長してきたのかをチェックするために、少し古い時期の決算から新しいものまで、時系列に見ていきます。
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