土井善晴さんが行き着いた「一汁一菜」
料理研究家の土井善晴さんとは、以前やっていた文化放送のラジオ番組で2 回対談させていただいたことがあります。お父様の土井勝さんから受け継がれ た料理に対する哲学をお聞きしたことを覚えてます。 “今「食事」といえば「ごはんを食べること」だけを指す。しかし、「材料を 買って、調理して、ごはんを食べて、後片づけをして」、これを全部まとめて 「家の食事」だ。食べることというのは「暮らし」そのもので、生きることと 同じことだと思う” そういう主旨のお話で、僕はとても賛同し、2回目にご出演願ったときは土井さんのキッチンスタジオにお邪魔して、2人でそれぞれ鍋料理を作った思い出があります。
その土井さんが、昨年、『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)と いう本を出されました。
その本の主旨は、「家庭料理は素材の持ち味を引き出して手をかけないことが一番で、ごはんと具だくさんの味噌汁があれば一汁一菜となる。ごはんも味 噌汁も漬物も人間が意図して付けた味ではないから、毎日食べても飽きない」 というもので、これまた、大いに賛同する内容でした。
この本を読んだ主婦が、楽に健康的な食事が作れることを知って、肩の荷を下ろすような気持ちになったという話も聞きました。粗食のほうが健康にいいし、自然にそういうものが食べたくなるんですね。
全食一汁一菜とはいいません。手をかけられるときは一汁二菜でも三菜でもい いわけですし、和食にこだわる必要もありません。日々の食事の基本スタイルを一汁一菜か一汁二菜くらいにして、必要以上に手をかけず美味しくて体にい い食事を作りましょうということです。
ごはんにひと工夫
一汁一菜でちょっと物足りないと思ったら、炊き込みごはんにするとか、「大根菜っ葉めし」や「海藻混ぜごはん」にするなどして、ごはんをアレンジ してみましょう。
大根菜っ葉めしは、大根の葉っぱをきざんで温かいごはんに混ぜ込んだものです。ボウルにきざんだ葉っぱを入れたら塩を漬物より少し強めにふり、手でギュギュッともんでしばらくおいてから水を絞って使います。温かいごはん に混ぜると青臭さが少し気になることがあるので、塩を強めにすることがポイ ントです。
海藻混ぜごはんは、ワカメのような海藻のカジメを、ごはんに混ぜ込んだ ものをよく作ります。
カジメはネバネバがある海藻で、きざんだものを味噌汁 などに入れるのが一般的ですけど、うちでは温かいごはんに混ぜ込んでカジメ飯にします。
昔は大きな棒状になっているものを削って食用にしていましたが、今は、細かくきざんで塩漬けにしたものを売っていますから、それをただ混ぜ るだけでミネラルたっぷりの混ぜごはんが出来上がります。
乾燥ワカメを細かく切って味付けしてある「わかめごはんの素」を買ってくれば、ワカメ飯も簡単に作ることができます。 ごはんと具だくさんの味噌汁があれば、それで一汁一菜になるという考え方 と一緒で、一汁一菜でも炊き込みごはんがあれば、一汁二菜に見えてちょっとグレードアップした気持ちになります。
炊き込みごはん
好きな具材を用意して、炊き込みごはんを作ってみよう。
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