可能性を殺さないために、「箱」の出入りは自由にしたほうがいい/牧村朝子×きゅんくん【中編】

タレント・文筆家の牧村朝子さんと、“性別を持たない”ロボットを製作しているロボティクスファッションクリエイターのきゅんくんに、次世代のセクシャリティやジェンダー論について話し合っていただいた対談。前編に引き続き、中編も「カテゴライズ」から話はスタートします。

「名詞」や「カテゴライズ」における安心感と不自由さ

きゅんくん 同年代の子を見てると、やっぱり自分をカテゴライズすることや、“名詞”で説明することも減ってきたのかな、と思いますね。

牧村朝子(以下、牧村) そうね。それに、たとえ言葉が変容していても、精神性は通底していると思ってる。

きゅんくん それでもやっぱりメディアとか広いところで伝えようとすると、名詞にせざるをえないのは感じます。分かり合っているコミュニティや友達だと、たとえ異性愛者の人でも「私はこんな感じ」っていう紹介の仕方をするけれど、そうじゃない場合はカテゴライズしないとその場所に立てないとか。

牧村 LGBTカテゴリーじゃないのに、どうしてLGBTサークルにきたの?みたいな。

きゅんくん 「アライ(ally、LGBTを理解・支援する人)です」って言ったり。そうなると「アライ」もカテゴリーですよね。

牧村 アライって言わないと入れてもらえない、みたいな。
でもね、そうやって「アライです」「ゲイです」って、名詞で区分けされた“箱”の中から名乗ることをやめて、たとえば「俺は男が恋愛対象なんだ」っていう自分単位での名乗りをする人が出てきていると思う。それがいいとか悪いとかではなくて、大きな流れとしてね。
でも、私が(前編で)お話したアメリカの60代の活動家の方は、ちょっと不愉快そうにしていたの。すごく覚えているのが「あなたの好きなレズビアン誰?」って聞かれたこと!

きゅんくん えー!

牧村 ちょっと困っちゃって。レズビアンかどうかで人を分けて考えないからわかんないなって言ったら、不服そうだった。
彼女たちにとっては、レズビアンを打ち出し、コミュニティを作り、カルチャー、文学を築いてきたという自負があるから、そこに所属するレズビアンや、レズビアンというメンバーシップカードを持つことは誇らしいことなのよね。「なんで私たちの築いた場所に入ってこようとしないの?」って感じているんだと思う。
でも入ろうとしない人は、「なんで入らなきゃいけないの?」って思っていて。「自由になるためにその場所作ったのに、なんで閉じ込めようとするの?」っていう感想を持ってる。

牧村 あとね、ゲイコミュニティを築いたくらいの世代の方が、「カテゴライズされない派」って言ってたわ。“最近のカテゴライズされたがらない若者たち”っていうのをカテゴライズした論文(笑)。何だかマトリョーシカみたいじゃない?

きゅんくん どんどんカテゴライズされていく。そしてカテゴライズしない人というカテゴライズ…。「カテゴライズ」って疲れちゃうんですよね。

牧村 いい面もたくさんあるんだけどね。集まりやすくなるとか、自分が何者かがわかる、自分だけじゃないって思える。でも、やっぱり疲れちゃうのはあるよね。

考え方が偏っているスペースって、居心地が悪いなって思うんです

牧村 きゅんくんが別のインタビューでこんなことを言ってたの。「作るに困らない自分自身と環境があれば、就職しようがしなかろうが大丈夫だろう」って。このものの見方ができる人って少ないと思っていて。
どれだけ貯金があるかとか、昔だったらどれだけ安心できる企業に勤めているかとか、多くの人がそういうところでものを見るじゃない。

きゅんくん 自分がどこに向かっているかじゃなくて、どこに所属してどんなステータスを持つか。

牧村 そうそう。いくら持っているかとか、厚生年金に入れるか、とかね。

きゅんくん 自分の目的が“所属する”というところに向いていないのはありますね。それよりも内容の方に目を向けてしまうので。それも困る時ありますけど。
大学で、単位のために授業に出る、みたいなのあるじゃないですか。そういうのが苦手でした。勉強したいから授業に出るんじゃない?って思っちゃって。

牧村 その感じすごくわかる! 私にもその違和感はすごくあったな。
“箱”がはっきりしていることで安心する人はいるよね。でも、中身がなかったりもする。だとすると、“箱”がなくなったら何もなくなっちゃうってことじゃない?私は「どうして“箱”で安心できるんだろう」「所属して肩書を持つことで安心できるのかな」って疑問に思ってた。

きゅんくん 私は“箱”が壊れる前提がある人とない人がいるのかな、って思ってました。

牧村 それは大きく違うところだよね。そしてきゅんくんはきっと、“箱”に入れなかったんだよね。私はね、なんだかかっこわるい気がした、息苦しかった。
結局私は大学を卒業しなかったんだけど、大学って勉強するところだと思っていたから、大学卒っていうのには興味がなかったの。だから、大学卒になるために行かなきゃいけない、必修とされる単位をとるための授業の空気とかが本当に嫌だった。

きゅんくん 禿同(はげどう)です。

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「21世紀の変人たち」とする「真面目」な話

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レオナルド・ダ・ヴィンチやエジソン、コペルニクス、空海 etc。これまで世の中を変えてきた人たちは、ほとんどが「非常識」な考えを持つ「変人」たちでした。この連載では「21世紀の変人たち(=クリエイター)」に焦点を当て、彼らが何を考えて...もっと読む

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コメント

zaklab 色々興味深いとともに、今の若い衆はこんな段階でもうこういったコトに気づくんだなぁと、ちょっと驚嘆。ヲイラ、今みたいな考え持つに至ったのはたぶん30ぐらいになってからだからなぁ。それまでにも紆余曲折はあったけどさ… > https://t.co/uT1fJxtWxc 2ヶ月前 replyretweetfavorite

miminashi @_papparapaaa 答えになってるかどうかわかんないけど、この箱の話が言いたいことに近いかも https://t.co/3Fvwm0lkQV 2ヶ月前 replyretweetfavorite

kyun_kun 中編が公開されました。 2ヶ月前 replyretweetfavorite

Qreators 所属する会社など「箱」に所属して安心する人は多い。でも、その中身がなかったりもする。だとすると、その「箱」がなくなったら、自分には何もなくなっちゃうってことなんじゃないか。... https://t.co/fqhBzBmiBH 2ヶ月前 replyretweetfavorite