何でも無茶をするというか、頭の隅々まで楽観論が染み渡っている彼は、初ドライブ先にディズニーランドを選んだ。
首都高速は若葉マークに甘くはなかった。
彼は泣きそうになりながらステアリングを握り、内心怯えていた文子さんは強くシートベルトを握った。
猛烈な勢いで走る車のなか、彼が実家から借りてきた軽自動車は、幹線道路に迷い込んだ小カルガモのような感じだ。
だが彼はやりとげた。ディズニーランドを視認した彼女は嬉しそうな声をあげ、こっちだ、と彼はステアリングを切る。
もうすぐだった。もうすぐ二人は念願のディズニーランドに着く。
そこは日野の川原とか八王子の公園とかとは違う。ミッキーやミニーやドナルドやグーフィーが、二人を待っている。
Dioの二人乗りでは決して辿りつかない、憧れのディズニーランド。
「モリ、くん?」
「文、ちゃん……。ここは一体」
首都高を降りて、着いたと思って車を駐めたのだが、何故だか目の前に巨大なガスタンクが聳えていた。
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