猟奇的な美女の正体は、ゾンビ先生の弟子エリクシアだった
それから数時間の後。
歌舞伎町の無情な空が薄く白む頃、ひろは花園神社の参道でゾンビ先生と落ち合った。
ひろはあの後Kをタクシーに乗せて帰すと、すぐに「ゾン通キャスティング&エンタテイメント」へ電話を入れた。幸い他のスタッフを通じてゾンビ先生へ連絡はついたのだが、新宿到着は朝方になるとのこと。その旨をエリにも伝え、いったん現場から避難・解散とさせてもらい、後ほど花園神社で再会することにしたのだ。
「わしは眠いぞひろ!! どんな時間に呼び出すんじゃこの老ゾンビを!! いったいなんの緊急事態だと言うんじゃええっ!?」
「ごめんなさい! だって、哲学ゾンビが! 哲学ゾンビが食ってたんだよマサオだかマサトだかを!! それでゾンビ先生を呼べって!」
「なに、哲学ゾンビじゃと? 哲学ゾンビは世界でも数えるほどしかいないはずじゃが……、はて、日本におったかのう?」
「女ゾンビだよ! メイクもバッチリで美人で見た目は人間と全然見分けがつかなくて……、あっ来た!! あれ! あの女!! 助けてっ!!」
その時、参道の入口にエリが姿を現した。先ほどの猟奇的な外見とはうって変わって、メイクも服装も元通りの淑女に戻っている。淑女はひろの隣にゾンビ先生を認めると、一目散に駆け出した。
「ゾンビ先生!!」
「おおっ、エリじゃないか!!」
疾風のように駆け、エリはゾンビ先生に抱きついた。
「先生!! 会いたかった〜〜〜もう!」
「いや〜どうしたんじゃエリ。奇遇じゃな! こんなところで会うなんて!」
しばし抱擁しながら互いを懐かしむ二人。そんな二人の会話をしばらく分析した後、ひろはそっと割って入った。
「あのー、つまりこの女の人はゾンビ先生の教え子なんですね? わざわざ外国から先生を追いかけてきたんですか!?」
「そうじゃよ。こいつの本名はエリクシア・カラロウカ。わしの一番古い時代からの教え子じゃよ。かれこれ2200年の付き合いになるかのう」
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