高卒が世界トップクラスの科学者を描くために味わった苦しみの対価

2016年、『QJKJQ』で江戸川乱歩賞を受賞した佐藤究さんが、受賞第1作として『Ank : a mirroring ape』を上梓しました。もともとは純文学作家としてデビューを果たしていた佐藤さんが、エンタテイメント作家に転身して、挑んだものは何だったのか。第3回は、マイケル・ジャクソンと鏡像、純文学の手法、最後のフロンティアとしての「主観」、についてです。

 純文学、パニック、ミステリー、人類史の起源に迫る知的な議論……「読む楽しさ」を、これでもかと詰め込んであるエンタテインメント
その大作を創り上げるための「決死の闘い」について著者の佐藤究さんに訊いた。

「素になったのは、マイケル・ジャクソン」—創作の原点

 僕の場合、まずは資料となるゲシュタルト・ブックというのを作ります。スケッチブックに関連する情報をとにかく切り貼りしていく。ゲシュタルトとはドイツ語で、全体を見渡す構造というような意味ですね。

 今回は情報量が多いので、まるまる2冊分になりました。これがストーリー・ボードの役割を果たします。これによって、自分自身もフィクションの世界にどっぷり浸かることができます。フィクション空間を、執筆中に自分のなかにどうキープするかは重要な問題ですからね。

 今回の小説の素になったものは何だったか。

 いろいろ頭を渦巻いていましたが、直接的だったのは、マイケル・ジャクソン。マイケルがチンパンジーのバブルスを抱いている姿、あれが念頭にあった。彼には「Man In The Mirror」という曲もありますね。今作は鏡像が大きなポイントになっていますけど、彼もまた鏡の魅力に取り憑かれた人だったんじゃないか。

 類人猿研究の本もたくさん読みました。人間とチンパンジーのDNAは2%も変わらないのに、なぜこうも違うのか。その結論は、今のところ出ていないみたいです。ということは、そこにフィクションが入り込む余地がある! そうピンときました。

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人類史の驚異の旅へと誘う、世界レベルの超絶エンタテインメント!!

Ank: a mirroring ape

佐藤 究
講談社
2017-08-23

この連載について

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文学者の肖像

山内宏泰

文学とは、なんなのか。文学者たちは今をどうとらえ、いかに作品に結実しているのか。言葉に向き合う若き作家たちの「顔が見える」インタビューシリーズです。

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kodansha_piece 『Ank: a mirroring ape』佐藤究インタビュー第3弾! 超話題作の原点は、マイケル・ジャクソンの「バブルス」だったーー。物語が生まれたきっかけから、飽きさせず読ませるための工夫まで、「佐藤究」流創作の極意!https://t.co/5aPnrDcI4v 約3年前 replyretweetfavorite

tyamaru_rururu テスト中 https://t.co/o638zBl3V7 約3年前 replyretweetfavorite