民主政治を乗せるインフラは近代以前に固まっている
岡田斗司夫(以下、岡田) 與那覇さんと話していて、果たして日本が本当に民主政治を実現できるのか疑わしくなってきました。
與那覇潤(以下、與那覇) 民主政治とは何かという点自体、人によって意見が分かれるところだと思いますが、ここでは、フランス革命以降に確立された「西洋近代的な議会政治の制度」がきちんと機能していること、という理解で合っていますか?
岡田 はい。
與那覇 僕は、民主政治がうまくいくかは、結局近代以前の伝統に規定されると思っています。ラフにいうと、国民性で決まるということですね。議会政治の制度自体は、時期の早い遅いはあれ、近代以降にヨーロッパ内外に広がっていきました。けれども、日本人が今でも百姓一揆の延長でデモをしているように、それぞれの国の政治文化は民主政治が入る以前に固まってしまっているんです。民主政治は、その西洋化以前の国民性によってつくられた、社会のインフラの上に乗せていくしかありません。
岡田 そうすると、百姓一揆根性のしみついている日本人は、この先も、行政上の責任のミスの追及としてしか議会政治を行なえないんですねえ。
與那覇 究極的な話、もう政治学より文化人類学の対象だと思うんですよ、日本政治って。天災が起きたら「祭祀に失敗した」ということで、定期的に王様を追い出すことで成り立っていた原初的な社会からほとんど進歩していないんじゃないか、というのが自分の見方ですね。
岡田 橘玲さんともそういう話になりましたが……うーん。
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