性」もそれ以外も、自分をカテゴライズしないと決めてる理由/牧村朝子×きゅんくん【前編】

昨今、性やジェンダーについてメディアなどで打ち出されることが多くなりました。とはいえ、まだ一部の人のものというイメージが強いのが事実。そもそも性の定義とは何なのか、どうしてなかなか当事者意識が生まれないのか。今回は、タレント・文筆家の牧村朝子さんと、“性別を持たない”着るロボット「METCALF(メカフ)シリーズ」を製作しているロボティクスファッションクリエイターのきゅんくんに、次世代のセクシャリティやジェンダー論について話し合っていただきました。二人が思う性やジェンダー論について、異なる立場、視点からトークを繰り広げます。

憧れのきっかけは「LGBTのレズビアンじゃなくて、まずあなたと私でしょ」

—お二人は今回初対面ということですが、以前からお互いのことはご存知だったのですか?

きゅんくん はい。私はずっと牧村さんに憧れていたんです。牧村さんがいろいろなところでLGBTQ(※1)について書いてらっしゃるのを拝読していたのですが、「LGBTじゃなくて、まずあなたと私でしょ」っていう感覚がすごくいいな、って思ったんです。そういう考え方をしている人もいるんだって。

※1:レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの各語の頭文字に、最近はクィアー(queer)も加わり表現されるようになった。意味については本対談の後半で触れています。

牧村朝子(以下牧村) そうだったのね。私は2015年くらいに、現代アーティストのスプツニ子さんのTwitterできゅんくんがリツイートされていたのを偶然見かけたんです。その時きゅんくんはすごく怒っていたの(笑)。「指示してるだけで、ロボットを作っている人が別にいるんだろって思われてるけど、全部自分で作ってます!」って。それがきっかけで知りました。

きゅんくん そんなこと言ってたんですね……。ここ数年であまりに目まぐるしく状況が変わったので、あまり覚えてないんです。結構前から私のこと知っていてくれていたんですね。

牧村 でもお互いにTwitterでリプライして、コミュニケーションをとりはじめたのはわりと最近ですね。

ジェンダーやセクシャリティは、「日本語で話すこと」にまだまだ抵抗がある

—お二人はジェンダーやセクシャリティの定義について、どう考えていますか?

きゅんくん ジェンダーについては、体に性別があるというのは事実としてあるけど、脳の性差はないと思っています。
成長途中の環境要因で考え方が変わることもあるし、子供を生むという人生のスケジュールを考慮した時に考え方は変わるかもしれないけど、生まれた時にはそれはないと考えていますね。

牧村 そうね、ジェンダーっていうのはきゅんくんが言うように、後天的なものだと私も思う。生まれた時点で決まっていない。

きゅんくん セクシャリティに関してはどう考えていますか?

牧村 キャッチフレーズ的な感じだったら「誰と寝るのかじゃなくて、どう生きるか」の話なんですよ、とは言います。きゅんくんは?

きゅんくん セクシャリティの話は、まだちゃんと言葉にできるほど固まってないんです。

牧村 全体的に思うのは、すごくカタカナだしアルファベットってこと。日本語・母語で話すことに抵抗感がある分野だな、と。
たとえば「LGBT」「セクシャルマイノリティ」みたいな用語による分類をするけど、それが絶対的な正解とはかぎらない。
今正しいとされている、「LGBTとは何か」「セクシャリティとは何か」っていうのは、あくまで英語圏の学者さんや活動家さんが発達させてきたものを中心としているから、全然違う角度からの見方があるっていうことを忘れないようにしたい。

きゅんくん 私は中学生の時に、名前は覚えていないんですが、セクシャルマイノリティの活動家さんのことを調べ始めたんです。トークの議事録を見たりしていました。だからちょっとはカタカナの単語が分かるけど、普通の人は確かに分からないかもしれないですね。

あえて「私はレズビアン」って言わない

きゅんくん 自分のことシスジェンダー(出生時に診断された性と自認する性が一致している)だとは思っていないんですけど、だからといってトランスジェンダーでもないんですよね。中学生の時は悩んでいました。
でもその頃に、カテゴライズすると疲れちゃうからやめようって思ったんです。そこからふわふわテキトーに、カテゴライズせずにいます。自認はバイセクシュアルなのですが、近頃は「セクシャルフルイディティ(※2)」も、もしかして自分に近いのかな、なんて思ったりもします。
そうすると性別があるとか、ジェンダーで社会が構成されているっていうのがあんまり気持ちよくなくて。

※2:LGBTの4種類のどの型にも当てはまらない新しい性のあり方とされる。別名「セクシャルフルイド」とも呼ばれており、好きになる相手の性別が水のように流動的で定まらずに、その時々の相手によって変わることから来ている。ハリウッド俳優ジョニー・デップの娘、リリー・ローズがカミングアウトしたことでも知られる。

牧村 60代くらいのアメリカの活動家の方とお話した時に、「最近の若い子はレズビアンって言わない」とおっしゃっていたのが印象的でした。その方の若い頃は、「私はレズビアン」「私はゲイ」ってカッチリ区別するような感じだった。「私はレズビアン」って名乗ることがかっこいいことだったって。でも今の若い子はなんだかそうやってガチッと言わない。そういうのを「クィアー(queer)」っていうのよねって。

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「21世紀の変人たち」とする「真面目」な話

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レオナルド・ダ・ヴィンチやエジソン、コペルニクス、空海 etc。これまで世の中を変えてきた人たちは、ほとんどが「非常識」な考えを持つ「変人」たちでした。この連載では「21世紀の変人たち(=クリエイター)」に焦点を当て、彼らが何を考えて...もっと読む

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rei124c41 セクシャルフルイディティって言葉は初めて聞くな。 パンセクとは違うのかしら。 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

kyun_kun 親が私のインスタ見てるらしい。この前この記事のスクショをインスタに貼ったから、カミングアウトしたことになった訳だ… https://t.co/h7VeT1Vb9H 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

kyun_kun 参考になりそうでならない最近出た記事です🙏 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

miminashi @0x75960 どうぞ https://t.co/N8nHDcCocO 約2ヶ月前 replyretweetfavorite