佐々木俊尚×影山知明トークイベント 対談編その3【第66回】

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの『そして、暮らしは共同体になる。』刊行記念に行われた、「シェアする暮らしのポータルサイト」代表の影山知明さんとのトークイベントをお送りいたします。本の内容についてはもちろん、さらなる未来に向けたお話に刺激をうけて、会場からも活発に質問が寄せられました。イベントの後半にあたる対談・質疑応答を全3回でお届けします。前半の佐々木さんの講演も、ぜひあわせてご覧ください。

司会 それでは、質問のある方、どうぞ。

質問者1 とてもわくわくするお話をありがとうございました。私は文京区で、子育て家族に特化した不動産屋をやりつつ、街が楽しくなるような活動をはじめたところです。実は、二つ用意していた質問にはすでにお話の中でお答えをいただいてしまいました。ひとつ目の、こうした活動は結局マイノリティにとどまるのではないか、という質問には「今はアントレプレナー(起業家)フェーズである」というお答え。ふたつ目は「お金との縁」という質問だったのですが、このふたつをあわせてお伺いいたします。

いまこういうフェーズというお話ですが、今後だれもが実現できるフェーズになったときに、みんながみんな幸せに働いて生計を立てていけるような状況には想像がつかないのです。あとに続く人も、(仕事に)夢を持てるようになるのでしょうか。

佐々木俊尚(以下、佐々木) 仕事と言うよりは、ビジネスのあり方がどう変わるか、ということを考えなければいけないと思います。『レイヤー化する世界』で書いたのですが、これからのビジネスはふたつに分離していきます。プラットフォームとモジュールです。基盤(プラットフォーム)を作る人はグローバルエリートです。トヨタ自動車やイオンや……マクドナルドもみんなそうで、ネット上ではFacebookやGoogleのように、大金持ちが社会の基盤をつくる。そうなれるのはごく一部なので、あとの人は、企業でも個人でも同じですが、自分をひとつのモジュールとしてプラットフォーム上でうまく流動させ、人とつながることでうまくビジネスを作っていくか。そういう発想が大事です。

たとえばFacebookが出てきたことによって、いままで想像もつかなかったような仕事がたくさん生まれてきたり、AppleによってApp Store向けのアプリ開発という仕事が生まれたり、こういうことはいくらでもあります。流動性が大事なんです。最近だとシェアエコノミーも広がってきて、民泊とかUberとか、いろんなのがありますよね。ああいう世界でもまた新しいビジネスが生まれてくる。うまくテクノロジーを駆使して、プラットフォームを活用しながら、どういうビジネスができるかということを一生懸命考えていくことが大事なんじゃないかと思います。

付け加えて言うと、AIが仕事を奪うという話がありますよね。確かに多くの仕事は奪われるかもしれません。そのときにどういう仕事が残るのかを考える必要がある。ホワイトカラーが残るわけではありません。エクセルの帳票に数字を入れるだけの仕事は無くなります。

井上智洋(いのうえ ともひろ)さんという若手の経済学者が『人工知能と経済の未来』という本の中で「CMH」が残る、と言っています。CはCreativity=文化的な仕事。MはManagement=経営者です。Hは何かというと、これが1番大事なのですが、Hospitalityです。例えば、松屋の店員がロボットなのは想像がつきますが、気持ちの良いカフェの感じの良いスタッフ、あの仕事は無くならない。介護ロボットは普及するかもしれないけど、最後の最後に声をかけてあげる優しさはやっぱり必要で、無くならない。人と人をつなぐ仕事が、最終的には残るんじゃないかと思います。その発想で考えれば、次から次へと新しいビジネスが生まれてくるんじゃないでしょうか。

質問者1 ありがとうございます。

質問者2 お話ありがとうございました。私は今学生で、行政の視点から街づくりを勉強しているのですが、おふたりに質問です。

ゼロから街をつくるときに、民間の人たちがアクターとなって作っていくのは理解できたのですが、その場合どのように行政と一緒に街づくりをしていくのか、というあたりを、それぞれのご経験の中の事例から教えていただければと思います。

佐々木 行政は、主体になってはいけない。これは何でもそうですが、役所が主体になってうまくいった試しがない。役所はあくまで支援。と同時に大事なのが、補助金漬けにしないことです。木下斉きのした ひとしさんの本を読むといいと思います。彼が言っているように、補助金漬けにすると、補助金を貰うためだけに動いてしまうので、自立しない。最初から「黒字にするんだ」という強い意志を持ってビジネスを立ち上げなければ、絶対うまくいかない。

補助金をもらわないためにどうするかというと、徹底的に低コストで、箱もの中心ではない考え方でいくこと。そういう流れしかないんじゃないかな。実際、今日紹介した、街おこしで新しく作ったカフェなどは、ほとんど自分たちでリノベーションしている。そこで補助金もらって立派な文化ホールとか建てたりするとうまくはいかないでしょう。民が自立してやること、官はそれをお金ではないところで支援する、そういう仕組みをつくること。そのふたつだと思います。

影山知明(以下、影山) 僕は、街は機械か、植物か、どっちなのかということを考えるといいと思っています。日本の街づくりにかかわってきた人は、基本的に工学部出身の人が多くて、機械を作るように都市計画やマスタープランを作るのがこれまでの方法論だったんです。道をどう通すか、橋をどう架けるか、といったハードを整える上では、そうした俯瞰的な視点が必要だし、設計図があることはとても大事だと思いますが、それらが一通り終わった今、次のフェーズでは機械ではなくて、植物を育てるように街をつくることが大事だと思います。設計図はなくて、状況がある。種があったり土があったり、雨が降ったり。1軒のカフェや、ひとりの人との出会い、おもしろいイベントなどなど、個々の魅力的な状況が街の中に点として生まれ、それがつながって線になっていく中で、結果的にその土地に合った形の木が育っていくと思うんです。そういう、最初の芽を出す場をつくるためのサポートなどを行政から得られると、面白いきっかけになるんじゃないかと思います。

質問者2 ありがとうございました。


質問者3 本を読みお話を聞いて、これからの状況で暮らしやすくなる人は、自分の自己を明確に持っている人、つまり何が楽しくて何が幸せで、何を食べたくて、どういうところに住みたくて、どういう人とつながりたくて、ということがわかっている人なのかなと思いました。これからの時代に佐々木さんが思う「暮らしやすい人」と「暮らしにくい人」の違いがあれば、教えてください。

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ジャーナリスト・佐々木俊尚が示す、今とこれからを「ゆるゆる」と生きるための羅針盤

そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚
アノニマ・スタジオ
2016-11-30

この連載について

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そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』がcakesで連載スタート! ミニマリズム、シェア、健康食志向……今、確実に起こりつつある価値観の変化。この流れはどこへ向かうのでしょうか?深い洞察をゆるやかな口...もっと読む

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risuko_cosmo 中間層が弱者となりつつある中で漠然とした不安があるのだけど、“共感できる人がいれば、その人についていけばいいんです。”という言葉に救われた。私には共感できる大好きな旦那がいる。 https://t.co/p3JpQmnPl2 1年以上前 replyretweetfavorite

anonimastudio 対談編その3、最終回です。これからの暮らしについて、会場から次々質問が飛び出しました。@cakes_news: 1年以上前 replyretweetfavorite