FinTech(フィンテック)とは、FinanceとTechnologyをかけ合わせた造語です。従って、ベースは古くからある金融ビジネスが提供してきたさまざまな「機能」を、最新のテクノロジーで改善・刷新するというニュアンスが含まれています。
読者の中には「FinTech? 何それ?」と構えてしまう方もいるかもしれませんが、基本的なビジネスモデルは、皆さんが日々接している金融ビジネスとその派生型に過ぎません。
はじめに知っておきたいFinTechビジネスの分類
とはいえ、ある程度はビジネス構造を把握していないと、いざ決算を読んでも何が重要な指標なのかがわからないままで終わってしまいます。そこで、私なりにFinTechのビジネスモデルを分類しておきます。
元になる金融ビジネスがそうであるように、この分野には非常に数多くのビジネスが存在しています。この記事はFinTechの解説エントリではないので、それらを網羅的にカバーすることを目的とはしませんが、専門誌『日経FinTech』では以下のような分類をしているそうです(2017年6月時点の情報)。
一目するだけで多種多様にあることがわかります。しかし、前述したように、FinTechビジネスが提供する「機能」は我々がすでに接しているものばかりです。主要な機能は、以下の4つに分類できるのではないでしょうか。
- 1. お金を預かる機能(銀行)=預かったお金を運用して稼ぐ
- 2. お金を貸す機能(ローンやクレジットカード)=金利で稼ぐ
- 3. 決済・送金をする機能=手数料で稼ぐ
- 4. ソフトウェア・SaaS(会計ソフトなど)=ソフトウェア代金で稼ぐ
例えば、銀行は預金者からお金を預かり、そのお金を企業などに貸し出して金利を得ています。さらに送金・ATM出金などで手数料も徴収している、という具合に1、2、3を組み合わせて事業を運営しています。
また、銀行の例のように、FinTechビジネスでは法人向けと個人向け両方のビジネスを組み合わせているケースも少なくありません。
FinTechビジネスの決算を読む際の重要な指標
このように、FinTechのビジネスモデルは多岐にわたるため、他のビジネスのようにわかりやすい一つの方程式で決算の重要指標を把握できるわけではありません。
それでも、ヒントはあります。FinTechビジネスの決算を読み解く上で大事なことは、収益が「ストック」によ って得られるものなのか、それとも「フロー」によって得られるものなのかを理解することです。
例えば「1. お金を預かる機能」を提供するビジネスは、単純化すると
売上収益=預金残高×金利
という公式が成立します。この場合は、預金残高という「ストック」が重要指標になります。
「2. お金を貸す機能」を提供するビジネスも同じく、単純化して考えると、
売上収益=貸付残高×金利
となります。この場合も、貸付残高という「ストック」が非常に重要な指標になります。
他方、「3. 決済・送金をする機能」を提供するビジネスでは、
売上収益=取扱高×手数料パーセント
となりますので、今度は取扱高という「フロー」が売上収益に影響します。こうして「ストック」と「フロー」のどちらで稼ぐビジネスなのかを把握することが、決算分析の最初の入り口になります。
『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』の3章では、はじめにFinTechビジネスを4つ、具体的に紹介するとともに、それぞれのビジネスの収益性を比較・分析していきます。次に、スマートフォンの普及によって劇的に進化を遂げている決済・送金ビジネスについて、先進企業の決算を読みながら、事業の仕組みを紹介します。
そして最後は、ECビジネスとFinTechと融合例を分析しながら、EC以外の既存産業でも多角化戦略を目的にFinTechを活用できるのかを考察していきます。
クレジットカードビジネスの収益性はどれくらい?
「FinTechの意味はわかったけれど、具体的なビジネスを知りたい」という読者の方も多いのではないでしょうか。ここでは、古くからあるFinTechビジネスの一つ「クレジットカードビジネス」を例にとって、その収益性を分析していきます。
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