手の届きそうにない何かに出会ったことがあるあなたへ
『人間の大地』サン=テグジュペリ
(渋谷豊訳・光文社)初出1939
日常の幸せ VS 憧れに向かう幸せ
あなたの人生を狂わすほどの「憧れ」に出会う一冊。命よりも大事な何かに取り憑かれてしまった人が見た景色とは。 #海外エッセイ #『星の王子さま』の作者 #「生きるとは?」「仕事とは?」といった哲学的な思索もあり #パイロットだった作者がその経験を語る #「紅の豚」「風立ちぬ」のファンは必見!! #新潮文庫の解説は宮崎駿
何かに憧れることは、その「何か」に人生を狂わされること。
人生が狂ってしまった誰かを見ながら、まるで鏡を見るように、その誰かによって人生を狂わされそうになる自分に気づくことがある。
何かに憧れることの力を知る。そして自分もそんなふうに何かに憧れてみたいと思う。
そうして、いつのまにか、人生が狂ってゆく。致死量の憧れを手にしながら。気がつけば、自分はどこにいるのかわからない。
—そんな経験をしてしまいそうになる本がある。
大地は僕ら自身について万巻の書よりも多くを教えてくれる。なぜなら大地は僕らに抗うからだ。人間は障害に挑むときにこそ自分自身を発見するものなのだ。ただし、障害にぶつかるには道具がいる。犂や鍬が要る。農夫は土を耕しながら、自然の神秘を少しずつ暴いていく。そうやって手にする真実は、普遍的な真実だ。それと同じように、定期航空路線の道具、つまり飛行機も、古くから存在するありとあらゆる問題に人間を直面させる。 cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。
アルゼンチンでの最初の夜間飛行中に見た光景が、今でも僕の目に浮かぶ。暗い夜の中に、平原に散らばる数少ない灯火の光だけが星のように煌めいていた。