都会とか現代とか、「忙しさ」にちょっと疲れたあなたへ
『スティル・ライフ』池澤夏樹
(中央公論新社)初出1988
都会の忙しさ VS 自然のチューニング
透明感ってこういうことか。精神的な何かのチューニングをするために、「文章」で「自然」と出会うことのできる物語 #芥川賞受賞作 #都会に疲れた人におすすめ #というか人生に疲れた人におすすめ #透明感のある文章を読みたいときに #自然を味わいたいけどなかなか行く時間のないとき #ゆっくり文章を味わってほしい一冊 #同じ文庫に入っている『ヤー・チャイカ』という小説もいいのでおすすめです
この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。
世界ときみは、二本の木が並んで立つように、どちらも寄りかかることなく、それぞれまっすぐに立っている。
きみは自分のそばに世界という立派な木があることを知っている。それを喜んでいる。世界の方はあまりきみのことを考えていないかもしれない。
でも、外に立つ世界とは別に、きみの中にも、一つの世界がある。きみは自分の内部の広大な薄命の世界を想像してみることができる。きみの意識は二つの世界の境界の上にいる。
大事なのは、山脈や、人や、染色工場や、セミ時雨などからなる外の世界と、きみの中にある広い世界との間に連絡をつけること、一歩の距離をおいて並び立つ二つの世界の呼応と調和をはかることだ。
たとえば、星を見るとかして。
「詩」や「都会の中の自然」みたいな、一見なくても困らなさそうなものって、どうして存在し続けているんでしょうね?
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