最近、料理をしている。去年、ふとした拍子に楽しくなったのだ。それまでひとつもしたことがなかった。ごはんも炊いたことがなかったし、野菜を剝いたり、切ったりもしたことがなかった。それがいきなり、楽しくなったのだ。なんでだろう、なんでかわからないけれど。熱中すると止まらなくなるタイプだから、最近はずっと包丁を握っている気がする。
特にスープをつくるのが楽しいから、指先は常に玉ねぎの香り。オニオンスープを毎日。稽古場でもガスコンロを持ち込んで。毎日、こつこつ。玉ねぎを飴色になるまで、弱火で2時間以上。炒める。役者さんたちがウォーミングアップしている最中に、炒めている。ぼくの周りの役者さんたちは匂いに敏感だから、嫌な顔をする。そんな顔もいい。嫌味を言われる。嫌味もぜんぶ、なにもかも鍋のなかにぶち込んで。炒めて、煮込む。おまけに花粉の季節だから、なおさらだ。