世に溢れかえる承認欲求にうんざりしているあなたへ
『フラニーとズーイ』J.D.サリンジャー
(村上春樹訳・新潮社)初出1961
世間から引き込もる VS 世間と戦う
止まらない自己愛や承認欲求との距離の取り方を教えてくれる、アメリカ大学生の青春文学。#アメリカ文学 #青春文学 #大学生が主人公 #自意識過剰 #承認欲求 #クリエイター志望の人は必見? #村上春樹訳もあるよ #大二病的な「イタい」思い出のある人は読んでほしいっ #清らかなものだけで生きる? #清濁併せ呑んで生きる?
サリンジャーといえば『キャッチャー・イン・ザ・ライ(ライ麦畑でつかまえて)』が有名だけど、私は『フラニーとズーイ』の方がずっと好き。
だって『フラニーとズーイ』は、地に足がついていて安心する。
『フラニーとズーイ』は、アメリカの名門大学に通う兄妹が主人公の小説。美しい妹・フラニーと、俳優で5歳年上の兄・ズーイ。要はアメリカの青春小説であり、演劇に打ち込みつつも思春期まっさかりのおふたりが、あーだこーだ悩んだり話したりする物語である。
演劇少女であるフラニーは、全編通してイライラしてばかりいる。その原因は、同じく演劇に打ち込む周囲の大学生のナルシスティックな振る舞い。
薀蓄を語ったり妙な見栄ばかり張ったり……お前らほんとに演劇をやりたいんかい、と問い質したくなるフラニーの周囲の大学生。
自分のエゴのにおいにうんざりしたことはないだろうか?
あなたにも覚えがないだろうか?(今真っ盛りのお年頃かもしれないけど)大学生くらいの、いらない承認欲求。肥大化した自己愛。何より「えっ、承認欲求や自己愛なんて自分にはありませんけど? 純粋にこれが好きでやってるだけだもーん」なんてうそぶく、白々しい無自覚さ。
思い返せば恥ずかしい黒歴史だろうが、その渦中に放り込まれた側としてはたまったもんじゃない。キミの自意識はダダ漏れである。
いやー、そんな大学生の自意識にまみれた人間関係なんて、いくら好きな演劇に携わっていてもイライラするよな、フラニー。わかるよ。私はうんうんと頷いてしまう。
だけどもっと「わかる……」と震えてしまうのは、彼女が「あいつらだけじゃないわ、私もそうなのよ!!!」と叫ぶ場面である。
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