神田松之丞“絶滅危惧職”講談師を生きる!

第九回 「勉強」から入った講談

東京演芸界期待の星であり、数少ない男性若手の講談師である神田松之丞は、落語芸術協会の二ツ目落語家によるユニット〈成金〉の仕掛人でもある。ここからは、時間を遡って彼の生い立ちを見ていきたい。


撮影・青木登(新潮社写真部)

 高校までの停滞を思うと、落語に出会った後の松之丞が、かくも貪欲かつ急速に自分の進む道を探し始めたことに驚かされる。自身では気づかなかっただけで、圓生の「御神酒徳利」と出会ったとき、すでに覚醒は始まっていたのではないだろうか。

「おやじが死んだあと、ずっと探してはいたと思うんですね。ただ『御神酒徳利』に関しては単純に楽しいなと感じたはずなんですよ。それを何かにつなげようという考えはなくて純粋にはまっていった。後で談志師匠の高座を見たときには、これだ、と思いましたね。でもそこではまだ模索の時期です。落語、講談だけではなくて浪曲の(玉川)福太郎先生はどうだろう、とか、とにかくピン芸を見まくりました」

 松之丞の芸人としての地力は、間違いなくこの時代に作られたものだ。彼の特殊な点は、芸の体験のために、何もわからないままでしろうと芸を身につけるのではなく、プロの芸を見て素養を貯えようとしたことである。落語研究会に入るのは論外だった。

「もちろん落研出身者だって優秀な方は(柳家)喬太郎師匠はじめいるんです。でも素人の変な癖がつく、という耳学問的な知識があって、落研に入ること自体が既にプロの考えじゃない、と当時の僕は勝手に思ってました。こんなに前で見ることができる大事な時間にもかかわらず、自分がやってどうするんだよ、自分でやることなんて後でいくらでもできるでしょう、と。今はお客としての感性を磨くときだし、それは絶対後で役に立つのに、何今やりたくなっちゃってんだよ、と思ってましたね。全然プロになる段取りわかってねえなって。もちろんそれだってどこかで聞きかじったのを、勝手に自分で解釈して言ってるだけなんですけど、当時の信念でした」

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新潮社
2017-07-21

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神田松之丞“絶滅危惧職”講談師を生きる!

神田松之丞 /新潮社yom yom編集部 /杉江松恋

ここ数年、演芸ファンの注目を集め続けている男がいる。 神田松之丞、1983年生まれの33歳。90年代以降、東京の講談界では入門者の多くが女性であり、日本講談協会にも、もう一つの講談団体である講談協会にも、彼以降に入門して現在まで現...もっと読む

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コメント

pingpongdash やっぱこの人すごいわ・・・ 約3年前 replyretweetfavorite

electric_chief @memushiri もうご存知だったら申し訳ないんですが、cakesの松之丞さんの連載は読んでます? 約3年前 replyretweetfavorite

yomyomclub 松之丞さん連載公開!|[今なら無料!]演芸界でもっとも熱い男、講談師・神田松之丞の革命的芸道論! 約3年前 replyretweetfavorite