第205回 関数の作り方(前編)

謎の関数を作ろうとがんばるテトラちゃん。でもそこで新たな疑問が浮かんで来ました。「関数を手がかりに」シーズン第3章前編。
登場人物紹介

:数学が好きな高校生。

テトラちゃんの後輩。好奇心旺盛で根気強い《元気少女》。
$ \newcommand{\SQRT}[1]{\sqrt{\mathstrut #1}} \newcommand{\HIRANO}{\unicode[sans-serif,STIXGeneral]{x306E}} \newcommand{\UL}[1]{\underline{#1}} \newcommand{\FBOX}[1]{\fbox{$#1$}} \newcommand{\GEQ}{\geqq} \newcommand{\LEQ}{\leqq} \newcommand{\LL}{\left\langle\,} \newcommand{\RR}{\,\right\rangle} $

図書室にて

ある日の放課後。テトラちゃんは図書室でおしゃべりをしている。

「そういえば、いつだったかユーリにこんなクイズを出したよ。言葉遣いは少し違うけど(第202回参照)」

クイズ

$x$の多項式で作られた関数$f$で、$x = 0,1,2,3$に対してそれぞれ以下の値を取るものを見つけよう。 $$ \begin{array}{|c|cccc|} \hline x & 0 & 1 & 2 & 3 \\ \hline f(x) & 123 & 58 & 3028 & 7 \\ \hline \end{array} $$

テトラ「いつも思うんですけれど、ユーリちゃんってすごいですよね。どんな問題でも立ち向かっていくんですから」

「そうだね。『めんどいめんどい!』って言ってばかりいるけど、けっこうよく考えるよね。このクイズは、確かユーリのほうから言ってきたんだよ。 この表のような規則は、数式で書けるのかって」

テトラ「そうなんですね……ところでこのクイズは、こういう意味ですよね。$x = 0$のときは$123$になり、 $x = 1$のときは$58$になり、$x = 2$のときは$3028$になり、 $x = 3$のときは$7$になるような関数$f$を見つけ出しなさいっ……!」

「そういうこと。だから、こんなふうに書いてもいい」

$$ \begin{align*} f(0) &= 123 \\ f(1) &= 58 \\ f(2) &= 3028 \\ f(3) &= 7 \\ \end{align*} $$

テトラ「はい、わかります。でも、こういう問題はどういうパターンで解いたらいいんでしょうか。 想像も付きませんが……」

「パターン?」

テトラ「パターンといいますか、解法といいますか、問題を解くコツのようなものです」

「この問題ならではの『パターンにあてはめる』という発想とは違うけど、考え方はいろいろあるよね。 僕たちがよく使うのは、もっとずっと一般的なパターンだけど」

テトラ「といいますと?」

「《ポリアの問いかけ》にあったかどうか忘れたけど、たとえば《小さな数で考えよう》なんていうのは考える糸口になるよね」

テトラ「なるほど! $f(0),f(1),f(2),f(3)$という$4$個の数が与えられたんじゃなくて、$$ f(0) = 123 $$ という$1$個の数だけが与えられたとするのですね」

「ああ、うん、たとえばね」

テトラ「だとしたら、$$ f(x) = 123 $$ だけでいいですね。どんな実数$x$に対しても$123$という数になる関数」

「なるほど! それは定数関数ってことか」

テトラ「次に、$2$個の数が与えられたとします。つまり、$$ f(0) = 123, \quad f(1) = 58 $$ ですから、二つの式の両方を満たすということで、 $x = 0$のときは$123$になって、$x = 1$のときは$58$にする……わかりました。こうですね」

$$ f(x) = -65x + 123 $$

「えっ!」

テトラ「えっ! あっ! 検算しますしますっ!……$$ \begin{align*} f(0) &= -65 \cdot 0 + 123 = 123 \\ f(1) &= -65 \cdot 1 + 123 = 123 - 65 = 58 \\ \end{align*} $$ ……合ってます!」

「いや、検算してなくてびっくりしたわけじゃなくて、いきなり$f(x) = -65x + 123$が出てきたことに驚いたんだよ」

テトラ「えっと、グラフで考えました。$(0,123)$と$(1,58)$という二点を通る直線を想像すると、 $y$切片が$123$で、右下がりですよね。どのくらい下がるかというと、 $123$から$58$まで下がるんですから、$123-58=65$で、$65$下がります。 ですから直線の傾きは$-65$です」

「ああ、なるほど。確かにそうだね」

テトラ「まちがった解き方でした?」

「いやいや、ぜんぜんそんなことないよ。《グラフで考える》のもいいことだし、 $(0,123)$と$(1,58)$の二点を通るって考えたのもすごい。 僕はもともと、違うルートで考えていたから、 テトラちゃんの発想法にびっくりしただけだよ」

テトラ「先輩はどんなふうに考えたんですか?」

「僕だったら、こんな順番で関数$f$を考えるかな。まず《$x = 0$のとき$x - 0 = 0$になる》し、 《$x = 1$のとき$x - 1 = 0$になる》と思った」

テトラ「それはそうですね」

「それから、《$x = 0$または$x = 1$のとき、$(x - 0)(x - 1) = 0$になる》」

テトラ「はい……」

「さらに、《$x = 0$または$x = 1$または$x = 2$のとき、 $(x - 0)(x - 1)(x - 2) = 0$になる》」

テトラ「はあ……」

「$(x - 0)(x - 1)(x - 2)$は、$x = 0,1,2$のどれでも$0$になる。でも、$x = 3$にしたときは、 $$ (x - 0)(x - 1)(x - 2) = (3 - 0)(3 - 1)(3 - 2) = 6 $$ になる。ということは、 $$ \frac{(x - 0)(x - 1)(x - 2)}{6} $$ という式は……

  • $x = 0$のとき、$0$になる。
  • $x = 1$のとき、$0$になる。
  • $x = 2$のとき、$0$になる。
  • $x = 3$のとき、$1$になる。
……わけだね」

テトラ「ははあ、わかってきました。先輩は、$x = 3$のときだけ$1$になって、 それ以外のときは$0$になる関数を作ったんですね?」

「そういうこと。そうすれば、$x = 3$のとき$7$になる関数も作れるよね」

テトラ「はい、そうですね。$7$倍すればいいんですから、$$ 7\times\frac{(x - 0)(x - 1)(x - 2)}{6} $$ という関数は、$x = 0,1,2$のときは$0$になるけれど、 $x = 3$のときは$7$になる関数ということですね?」

「その通り! この関数には$f_3(x)$という名前を付けておこう。さっきは分母の$6$を計算しちゃったけど、 計算しないほうがいいかな」

$$ f_3(x) = 7\times\frac{(x - 0)(x - 1)(x - 2)}{(3 - 0)(3 - 1)(3 - 2)} $$

テトラ「$f_3$という名前にするんですか? それは、どうしてでしょう」

「$f_0,f_1,f_2$を同じようにして作りたいから」

$$ \begin{array}{rcrcl} f_0(x) &=& 123 &\times&\dfrac{ (x - 1)(x - 2)(x - 3)}{ (0 - 1)(0 - 2)(0 - 3)} \\[8pt] f_1(x) &=& 58 &\times&\dfrac{(x - 0) (x - 2)(x - 3)}{(1 - 0) (1 - 2)(1 - 3)} \\[8pt] f_2(x) &=& 3028 &\times&\dfrac{(x - 0)(x - 1) (x - 3)}{(2 - 0)(2 - 1) (2 - 3)} \\[8pt] f_3(x) &=& 7 &\times&\dfrac{(x - 0)(x - 1)(x - 2) }{(3 - 0)(3 - 1)(3 - 2) } \\[8pt] \end{array} $$

テトラ「……なるほど! 規則的に作れるんですね」

「そうだね。$k = 0,1,2,3$とすると、関数$f_k(x)$というのは、$x = k$のときだけ$f(k)$の値に等しくなり、$x \neq k$のときは$0$という値になる関数」

$$ f_k(x) = \begin{cases} f(k) && (x = k) \\ 0 && (x \neq k) \\ \end{cases} $$

テトラ「……」

「あとはこれをぜんぶ足し合わせればいいよね」

$$ f(x) = f_0(x) + f_1(x) + f_2(x) + f_3(x) $$

テトラ「……」

「これで方針はできたから、あとは実際に計算してやればいいことになる」

テトラ「先輩……あたしは、わかりません」

「難しかった? そんなことないよね」

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

ケイクス

この連載について

初回を読む
数学ガールの秘密ノート

結城浩

数学青春物語「数学ガール」の女子高生たちが数学トークをする楽しい読み物です。中学生や高校生の数学を題材に、 数学のおもしろさと学ぶよろこびを味わってください。本シリーズはすでに何冊も書籍化されている人気連載です。 (毎週金曜日更新)

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

hyuki 金曜日は『数学ガールの秘密ノート』の日。最新回は今回お休みですが、過去記事の無料リンク2個をツイートします。 公式 22日前 replyretweetfavorite

chibio6 前半のf(x)を計算したところ、係数の値がなんとも不揃いな3次関数になり当たっている気がしない。今日のところはあきらめて明日またやり直そうと思う。 2ヶ月前 replyretweetfavorite

koushi_1214 関数の作り方 解析教程(上)で読んだ! 3ヶ月前 replyretweetfavorite

m_yas1028 関数を「探す」のでなく「作る」こと。 今の日本の数学教育で意外と無い視点かもしれない。 3ヶ月前 replyretweetfavorite