一般的に「子どもが生まれると夫婦は男女関係ではなく、父と母になる」と言われているし、周囲を見渡すと確かに、そうなっているように見える。
けれど私は「そんなのはイヤだ、それなら産まない」と思っている。旦那さんには、妊娠中も出産後も、少しも妥協せずに私のことを「俺の女」として見てほしいし、そうじゃないと困る。
「仕方ない」と思っている男の人は多いけれど
妊娠出産による妻の身体の変化について、「妊娠中だから仕方ないよね」とか「授乳してたら、誰だってそうなるよね」という感じで「大丈夫、だって僕たちの子どもを産むためだもんね、許容するよ」というスタンスの男の人は多いけれど、私はもし自分の旦那さんにそんなことを言われたらすごく悲しくなる。
だってそれって、子どもを産ませるために妻から女の魅力が失われることは受け入れます、子どもを持てる代償として妻の身体にときめくことは諦めます、というスタンスであり、「もちろん男としては本望じゃないけれど、子どもを産むってそういうことだから仕方がないし、我が子を持つ喜びには代えられないから、嫌だけどいいよ」という話だ。
何だそれ、と思う。それは妻として、全然「なら、良かった」と安心できるコメントではない。そんなことを言われた日には「ってことは、この先のあなたの男としての欲望は、やっぱり他所の女でまかなうことになるの? 仕事とセックスは家庭に持ち込まないスタイルで生きていく夫になるの?」と不安にしかならない。
私は、生まれ育った家庭が崩壊していて、物心ついた時には両親の間で離婚の話が出ていた。結局のところ未だに二人は離婚していないけれど、私はずっと父と母のことを「ラブラブではない」「家族なのだろうけれど、きっと夫婦ではない」という認識をしていて「子どもたちの父と母として繋がっているだけで、二人の間に繋がりはない」という目で見ながら育ってきた。
そのことについて、特に悲観したこともなく、傷ついてもいなくて、この二人の組み合わせではダメならば、せめてそれぞれ、他の誰かとラブラブになって幸せをいっぱい感じて免疫力を高めながら健康寿命を最大に引き伸ばして生きていってほしいと思っているのだけれど、でも、もしも「あなたの願いをひとつだけ何でも叶えます」的な状況になったとしたら「お父さんとお母さんがラブラブな男女だった頃の二人のまま、壊れないようにしてほしい! 二人がカップルとして破綻してしまうのを阻止してほしい!」と願うだろうな、とは今も昔もずっと思う。もし神様が現われて、希望を訊かれたらそう言う(他の願いはどれも自分が頑張ればどうにかできそうだけれど、こればっかりはどうしようもないので神に託すしかない)。
子どもにとって、自分を作った二人がカップルとして破綻してしまうのは、けっこう悲しいことだ。
そもそも子どもは、ラブラブな相手との間に産みたい
そう考えると、子どもを産んで育てるために2人が男女でいるにあたり大事な部分(妻の女体としての魅力)を犠牲にするってどうなのだろう、と思う。本末転倒じゃないか、と。
夫婦にとって、そこまでして子どもを作る意味って何?と思うし、子どもを産んで育てることによって彼好みの女でいられなくなるのであれば、私は子どもなしでラブラブ夫婦でいることを選びたい。
そもそも私にとって子どもは、あくまでラブラブな相手との間に産みたいものだ(前回書いたように、ラブラブというだけでは全然ダメで足りないけども)。
「とにかく今すぐ子どもが欲しい! 結婚はできなくても子どもだけでも欲しい! シングルマザーでいいから産みたい!」というようなテンションは私の中にないものなので、今回産むことにしたのだって、ラブラブで大好きな彼との子だから、この夫婦仲で一緒に育てるのはとても楽しそうだから、ということが大前提にある。
だから妊娠や出産を通して、彼の好みの女枠から外れるのであれば、それはラブラブが失われるリスクなので「え、じゃあ、産まないでおくけど! ラブラブじゃなくなるなら、そんな男との間に子ども産みたくないし! それにカップルとして破綻すると分かってて産むのは子どもに申し訳ないし!」と思う。
私のことを常に「女」として見ている旦那さんの言動
しかし、その意味で旦那さんは完璧だった。妊娠してから今日まで一度も、私を不安にさせていない。「子どもを産むんだからしょうがないよね」的なことを、彼は言ったことがない。
彼は妊娠する前から「子どもが欲しい!」としつこかったけれど、同時に「でも妊娠線は絶対に作ってほしくない!」ともうるさかった。そして「でも大丈夫、俺がちゃんと美咲ちゃんにボディクリームを塗る係をやるから。妊娠線予防にはシアバターがいいから、シアバターを買いに行こうね」と具体的な対策のプランまででき上がっていた。
また「帝王切開は絶対ヤダ!」とも言い張っていた。「美咲ちゃんのお腹に傷が残るなんてありえない、困る、帝王切開にならないようにやれるだけのことして! 逆子体操は絶対に頑張って! 散歩はいくらでも一緒に行く」と妊娠初期からしつこかった。
太ることに対しては歓迎していた。産休前は撮影などの関係で体重管理をしていたのだけれど、毎日のように「早くもっと太って!」とワクワクした目でリクエストをしてきて、ことあるごとに「産後もダイエットしなくていいんだからね!」と言い、体重が増えるたびに「むちむちで可愛い!」と嬉しそうにしていた。さらには私を抱き上げるだけで100g単位の体重の変化をピタリと言い当てていた。
出産に向けてどんどん変化していく乳首にも敏感に反応していて「ビフォーアフターを見比べよう!」と、妊娠前の私の裸の画像を持ち出しては楽しそうに見比べて「ほら見て美咲ちゃん、全然違うの。安心して、どっちも好きだから」と満足そうにしていた。
そういう彼の言動に触れるたびに「この人は、私のことをすごく女として見てるんだな」と思った。「この先もずっと私のことを女として見る気満々で、そこに妥協する気は一切ないんだな」と感じた。彼は私を女として見ることを、子どもを持つための生け贄にしていない。
「母親」と「女」は両立できる
だけど、彼は子どもを熱望している。20代半ばの男性でここまで父親になりたい願望が強い人も珍しいと思うし、「ねえ早く妊娠して! 子ども欲しい! 絶対に産んでね!」と結婚前から口癖のように言っていて、私との子どもをすごく欲しがっていた。今も、本当に産まれるのかどうかもわからない出産予定日に希望休の申請を出しているし、里帰り出産をしない私と子どものお世話係をするために産後にそこそこの長さの休み(ちょっとした育休)を取るつもりで手配もしてくれている。妊婦健診も全て同行してくれていた。
ただ妊婦健診に関しては、父親としてというより私の男として同行していた。