松尾 今日は夫婦の話をするというので、恥ずかしくて耐えられないと思って、急遽サングラスを買ってきました。
犬山 それでさっきからRay-Banをかけていらっしゃるんですね(笑)。『東京の夫婦』は、松尾さんと奥様のM子さんの日常が優しい文章で丁寧に描かれていて、松尾さんってこんな暮らしをしていらっしゃるんだ、と改めて思いました。
松尾 連載を始めるころ、ちょうど2回目の結婚をしたばかりだったので、夫婦を通して東京の生活を書いてみようと思ったんです。
犬山 「地方から出てきた二人が東京で出会って、結婚して東京で住む」って、考えてみたら私もそう。私が宮城で夫が新潟出身。東京はそういう人が大勢いるんですよね。
松尾 結婚という制度は、人間が勝手に作り上げたフィクションというか、幻想の絆じゃないですか。そもそも「制度」というもの自体が幻想だと思っているんですが。