堀込泰行×燃え殻対談

燃え殻」の由来となったミュージシャン・堀込泰行の詞から受けた影響

cakesの人気連載を書籍化した小説「ボクたちはみんな大人になれなかった」が、現在7万部超えのベストセラーとなっている燃え殻さん。そのペンネームは、元キリンジの堀込泰行さんが”馬の骨”名義で2005年に発表した1stシングルの表題曲「燃え殻」から拝借したものといいます。今回は燃え殻さんと堀込さんの初対面が実現しました。「燃え殻」「馬の骨」といったネーミングや自身の作品における言葉選びについて、三週に渡ってじっくりと語り合います。

「燃え殻」「馬の骨」の由来

燃え殻 僕、人生で会いたかった人ベスト3が、大槻ケンヂさんと、糸井重里さんと、堀込泰行さんだったんです。本を出してこの1カ月で皆さんと会うことが叶って、「これは大変なことになったな」と思いながら今生きているんです。

堀込泰行(以下、堀込) そんな大役を。その二人に挟まれるというのは大変恐縮です。

燃え殻 勝手に名前使ってるのに、対談にまでしていただいてこちらが恐縮です。すいません。

—どうして「燃え殻」というペンネームにされたんでしょうか?

燃え殻 今までは由来を聞かれても「理由は特になく、たまたま」と言い張ってきたんですよ(笑)。本当は僕、馬の骨のこの曲が大好きだったので。ペンネームとかハンドルネームってすごい難しいじゃないですか。力(りき)入れるともうダサいし、力入れなくてもダサいし、どっちに転んでもダサいっていう(笑)。けど、「燃え殻」を聴いたとき、力が抜けてて、いいなって思ったんです。もちろん当初はTwitterのアカウント名として考えただけだったから、その名前で小説を出すなんて夢にも思ってなくて。連載を始めるときに「『燃え殻』でいいですよね?」と聞かれて、これいいのかなって(笑)。堀込さんに一回言っておかないとダメなんじゃないかなって思っていたんです。


燃え殻/Red light Blue light Yellow light(馬の骨)

堀込 いえいえ。

燃え殻 最近、自分の存在を知って頂いたとお聞きしました。

堀込 知ったのは3カ月前くらいですかね。燃え殻っていう名前の作家さんが話題になってると聞いて。もしかしたら俺の曲を聴いてくれたのかなと一瞬よぎったけど、まあそれはないだろう、そこまで奢ってはいけないと思って。

燃え殻 いやいやいや(笑)。堀込さんの曲からお借りしていることはTwitterを見てる人たちにはもうバレてるので。キリンジ時代から堀込さんのファンの方々も本を読んでくれてるのが僕としてはうれしいです。

堀込 「燃え殻」はちょっと珍しい言葉ですよね。「吸い殻」とか「抜け殻」はよく使うけど、物が燃えて炭になる手前みたいな、焚き火のあとに残ったあの木の感じはなんて言うんだろうと思って「燃え殻」っていう言葉を見つけたんです。

燃え殻 ミュージックビデオも自然体ですごく好きです。

堀込 (「ボクたちはみんな大人になれなかった」の表紙のモデルを見ながら)このくらいの髪の長さのときでした。


ボクたちはみんな大人になれなかった(新潮社)

燃え殻 あのころすごく長かったですよね。

堀込 えっとね、その前くらいからなんとなく伸ばしたいとは思ってたんだけど、レコーディングを挟むとその期間中散髪に行かないんで伸びっぱなしになるわけですよ。その後ジャケット写真とかアーティスト写真を撮るときに、「せっかく伸びてるから生かして撮りましょう」みたいな話になって、「燃え殻」のときはあの長さになったんですよね。2nd(シングル「センチメンタル・ジャーニー」)の時も同じ経緯で異様に長いんですけど。だいたい伸びっぱなしっていう理由です。

燃え殻 そうなんですね。「馬の骨」っていう名前も素敵だなと思ったんですよね。「燃え殻」とか「Red light,Blue light,Yellow light」とか、そういう表現がかっこよくて、僕もそういう感性の持ち主になりたかったなー、って憧れみたいな気持ちで。堀込さんの作る詞が大好きです、とにかく。
 たとえば「エイリアンズ」が嫌いな人って(取材地の)渋谷にいないと思うんですけど(笑)、例に漏れず僕もすごい好きなので、「仮面のようなスポーツカー」みたいな言葉の使い方を自分なりに換えて小説の中に使ってわせて頂きました。

堀込 ありがとうございます。「馬の骨」はね、「キリンジ」が才能に優れていて将来有望な青年とか少年っていう意味なので、それと対になるような名前にしたいと思って浮かんで。

—「馬の骨」は、得体の知れないもの、役に立たないものという意味ですね。

堀込 一見ショッキングで強烈なんですけど、見ていたらだんだん気に入ってきて。それにネイティブアメリカンの名前みたいにも思えたんですね。ネイティブアメリカンの名前って、適当ですけど、訳すと「丘の上に立つ男」とか「太陽を指差す女」みたいな、ちょっとまどろっこしい変わった意味だったりするじゃないですか。

燃え殻 ああ、中島らもさんの本にもそういう話がありました。詩的な感じですよね。

堀込 名前そのものが詩みたいな。「馬の骨」も、ネイティブアメリカンやモンゴルの遊牧民の名前みたく思えてきたっていうか。詩的だし希望的でもあるし。それで付けた気がします。

堀込泰行の詞から受けた影響

堀込 小説、面白かったです。いっぱい引っかかる言葉がありました。「男の子が全員、男になれるわけじゃないんだよ」って彼女が言うところとか、あー痛いとこ突くなーと思って。そういうページにドッグイヤーを付けて今日持ってきました。

燃え殻 わーうれしい。話の中には、音楽がいろいろ出てくるんですけど。

堀込 そうですね。

—小沢健二「ぼくらが旅に出る理由」、かまやつひろし「やつらの足音のバラード」など、数々の名曲の引用がありますね。

燃え殻 そのへんを踏まえたりそうでなかったり、BGMを付けて読んだっていう読者の方も多くて。その中で、堀込さんの曲を聴きながら読んだという人がかなり多いんです。もちろん僕自身も好きだし、なんとなく雰囲気が合うのかなって。

堀込 おおー。

燃え殻 僕は小説を書いたことがなかったので、小説って何かということすらわからなくて。cakesで連載したものを新潮社から出すって決まってとき、正直困ったなあと思ったんです。
 そこで本の帯を書いてくれた方々に「小説ってなんですか?」って聞いたんです。「小説は、人生とは何かを語っているもの」って言う人もいれば、「良し悪しは別にして主人公が最初と最後では変化しているもの」って言う人もいて。

堀込 うんうん。

燃え殻 そのすべての要素を入れつつ、自分の中では、インターネットが主流の現代の人が、わざわざ時間を割いて読む小説にするにはどうしたらいいか考えたんですね。今売れている小説を意識して書くというよりも、今、人が一番時間を奪われているスマホのアプリだったりネットのまとめサイトだったりブログだったりYouTubeだったり、そういうものを意識して、本はあまり読まないという人たちにも読んでくれるものにしたいなと思ったんです。

堀込 なるほどね。

燃え殻 だから、全体的にストレスなく読めるかどうかは重要なポイントでした。音楽のことはよくわからないのですが、堀込さんのように難しい言葉ではなくみんなが使ってる言葉を用いて、でも直接的な表現ではなく、それわかる!っていうところを突きたかったんです。

堀込 シンプルな言い回しで物語を紡いでくっていう感じは、読んでてすごく伝わってきました。小説って、回りくどい言い方だったり、文体に酔ってる場合もあると思うんですね。そういうまどろっこしさがなくて、でも描かれてる感情はすごく繊細で、僕こそ感銘を受けましたね。

燃え殻 ありがとうございます!

構成:鳴田麻未 写真:大熊信(cakes)

次回は9月7日(木)公開予定


Line Mobile のCMソングとして起用され話題になった、堀込泰行のキリンジ時代の代表曲「エイリアンズ」が2017年夏、ラヴァーズverとして再生、デジタル配信と限定12インチアナログ盤の2形態でリリース決定!

アーティスト:YASUYUKI HORIGOME & THE NEW SHOES
タイトル: エイリアンズ (Lovers Version)
発売日:2017年8月9日(水) 追加プレス発売:2017年9月6日予定
Apple Music / LINE MUSIC / AWAなどのサブスクリプションサイトでも配信。
ハイレゾ配信:e-onkyomora
アナログ盤:Amazon

この連載について

堀込泰行×燃え殻対談

堀込泰行 /燃え殻

cakesの人気連載を書籍化した小説「ボクたちはみんな大人になれなかった」が、現在7万部超えのベストセラーとなっている燃え殻さん。そのペンネームは、元キリンジの堀込泰行さんが”馬の骨”名義で2005年に発表した1stシングルの表題曲「...もっと読む

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Vudda 3件のコメント https://t.co/YUhrT0Abue 5日前 replyretweetfavorite

chibinyanya (知らない人へ)「燃え殻」は堀込泰行さん(馬の骨)のソロデビュー曲のタイトルです。詳しくはこちらを。 12日前 replyretweetfavorite

ayanocchi やっぱりそうなのね~ 13日前 replyretweetfavorite