えっ、飲んじゃうの?」こんな『芝浜』もアリなのです

同じ『芝浜』は一つとしてない。
志ん生、文楽ら昭和の名人から、志ん朝、談志、さらには小三治、談春、一之輔など現役トップの落語家まで、彼らがどのように演目を演じてきたのかを分析。落語の魅力と本質に迫る新刊『噺は生きている 名作落語進化論』(広瀬和生著)。
本書の刊行を記念し、cakesでは「第一章 芝浜」を特別公開します。
第9回は、落語界のイノベーター、立川談笑の『芝浜』について。

新しいサゲの開発

「また夢になるといけない」というサゲは、あらゆる落語のサゲの中でも最も秀逸なものの一つだろう。これをもし変えるとすれば、立川談笑しかいないと僕は思っていた。そして、それは現実のものとなった。

談笑の代表作とも言える『シャブ浜』は、『芝浜』の改作というよりは新作落語に近い。2005年に『シャブ浜』をつくった談笑は、その3年後、本当の「『芝浜』の改作」に取り組み、サゲを考案することになる。

芝の浜で40両入った財布を拾ってきたが女房に夢だと言われた一件から3年後の大晦日。今では表通りに店を構えている。

湯屋から帰ってきた亭主。

「ただいま」
「お帰り。上総(かずさ)屋の件どうなった?」
「決まったよ。年が明けたら河岸の中に仲卸しの店が持てる。お前のおかげだよ。100両あれば河岸の中に大きな店が持てるって言われたときに、お前が『はいよ』って右から左に100両出してきたからな。スゲェな、お前のやりくり上手は」
「稼ぎ男がいればこそだよ」

幸せに浸る二人。やがて、立ち上がってなにか探し始めた亭主に女房が声をかける。

「あたし、折り入って話が」
「いや、俺も話が……」

ふと、なにかを見つけたという顔をして、女房の顔を見る。黙って泣く女房。

「私が噓をついてました、ごめんなさい」

勝五郎が見つけたのは古い革財布だ。

亭主の告白

「怒ってないよ。手ェ上げてくれ。いいから、聞かせてくれよ。俺、これ知ってたよ。……泣かねぇでくれ、ホントに怒ってないから」

談笑の『芝浜』では、先に打ち明けるのは亭主のほうだ。

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噺(はなし)は生きている 名作落語進化論

広瀬和生

同じ『芝浜』は一つとしてない。 志ん生、文楽ら昭和の名人から、志ん朝、談志、さらには小三治、談春、一之輔など現役トップの落語家まで、彼らがどのように演目を演じてきたのかを分析。落語の魅力と本質に迫る落語評論本、『噺は生きている 名...もっと読む

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コメント

memushiri 談笑師匠の芝浜、何だこれ!文字だけでも感動する。めちゃくちゃ聞きたい!!!___ 約3年前 replyretweetfavorite

andou0725 この芝浜、生で聞きたいなー! 約3年前 replyretweetfavorite

jhanagata すげぇ。 この芝浜は知らなかった。 談笑さんの芝浜か…。 約3年前 replyretweetfavorite

imyme_999 良い ( ˘ω˘ ) 約3年前 replyretweetfavorite