岡本健 /藤田直哉
こんなところにゾンビかよ
近年、ゾンビをテーマにした書籍が多く出版されています。ゾンビ自体の面白さ、ゾンビを考えることの面白さとは何なのでしょう。話題書『新世紀ゾンビ論』と『ゾンビ学』の著者による連載2回目のテーマは「こんなところにゾンビかよ」。いまやゾンビはフィクション/ノンフィクション問わず、さまざまなコンテンツや場面に登場するようになっています。意外なものまでもがゾンビに! その一端を紹介しましょう。
拡張子としてのゾンビ 藤田直哉
感染・寄生
意外なところにゾンビはいる。どんなところにでも湧く、あらゆるジャンルに寄生し、乗っ取ることこそが、ゾンビの新しい特徴と言うべきだろうか。ゾンビそれ自体がウイルスのように他のジャンルに感染し、全てをゾンビ作品に変えてしまうのだ。
たとえば、ゲームの『ゾンビ・ファーム』。牧場を経営するスマホゲーム、通称「牧モノ」のフォーマットだが、野菜などの作物と同じように、ゾンビが収穫できる。意味が分からない。死体を植えているということだろうか。全体は牧場経営ゲームの呑気な調子で絵柄などがデザインされているので、その中にゾンビが収穫できるという要素が異様に尖がって浮いていて、シュール・リアリズムのようになっている(異質な二つを繋げることで、意想外の繋がりを生んだり、違和感を発生させたりする)。寄生体としてのゾンビはこのように様々なジャンルに寄生する。
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この連載について
岡本健 /藤田直哉
近年、ゾンビをテーマにした学術的な書籍が世界で多く出版されているのをご存知でしょうか。そんな中、2017年春、日本で『新世紀ゾンビ論』、『ゾンビ学』という本格的なゾンビ研究の始まりを告げる本が相次いで刊行されました。ゾンビの面白さ、そ...もっと読む
著者プロフィール
1983年札幌生まれ。東京在住。SF・文芸評論家。二松学舎大学、和光大学、日本映画大学、女子美術大学非常勤講師。
著書に『新世紀ゾンビ論』(筑摩書房)『シン・ゴジラ論』『虚構内存在 筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉』(作品社)。編著に『地域アート 美学/制度/日本』(堀之内出版)、『3・11の未来 日本・SF・創造力』(作品社)など。
1983年奈良市生まれ。北海道大学文学部卒業(専攻は認知心理学)、北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院観光創造専攻博士後期課程修了。博士(観光学)。現在、奈良県立大学地域創造学部准教授。単著に『ゾンビ学』(人文書院)、『n次創作観光』(NPO法人北海道冒険芸術出版)、共著に『コンテンツツーリズム研究』(福村出版)、『メディア・コンテンツ論』(ナカニシヤ出版)など。http://researchmap.jp/t-okamoto/