神田松之丞“絶滅危惧職”講談師を生きる!

第七回 無二の親友との出会い

東京演芸界期待の星であり、数少ない男性若手の講談師である神田松之丞は、落語芸術協会の二ツ目落語家によるユニット〈成金〉の仕掛人でもある。ここからは、時間を遡って彼の生い立ちを見ていきたい。


撮影・青木登(新潮社写真部)

 時間が停まったような日々を送っていた松之丞少年にちょっとした転機が訪れる。都内私立の聖学院高校に進学し、初めて小学校時代の自分を知らない同世代との生活が始まったのだ。聖学院はプロテスタント系の男子校である。そこでゼロからの出発になった。

「学校に対しては、旅人みたいな感じでしたね。ここは定住するとこじゃないというか、そもそも教えられることが好きじゃないんですよ。自分で本読んで勉強するのはいいんですけど、先生が言ったことを記憶して、テストで点を取る作業も好きじゃなかったですし、興味をそそられないことは徹底的にやらない性格でしたから。成績悪いともちろん悔しいんですけど、これは僕の戦うとこじゃない、と言い訳できる。英語教育とかにもすごい文句言ってました。こんなの教えても誰も英語喋れるようになってないんだから教育方法が間違ってる、それを教えられるのは絶対嫌だ、って。全般にわたってたぶんそうでした。僕の求めてる教育じゃないっていう(笑)。やたらそういう主張だけはしてましたね」

 半端ではない違和感、そこにいるべきではない異邦人感のある高校生だったのだろう。

「思い起こせば、絶対に幼稚園の頃のほうが人生を楽しんでましたよ。おやじもまだ完備されてたし(笑)。幼稚園は、母親と十五分ぐらい歩いて通ってたんです。当時流行っていたビックリマンチョコを帰りに買ってくれるんですよ。それが決まって二個で、近くの牛乳屋さんで何か飲ませてくれる。でもビックリマンチョコ三個だと牛乳は無しなんです。そういうルールがあって、真剣に悩んでましたね(笑)。何が正解なのかなって。そういう幼稚園時代がバラ色でした、まだ陰もなくて。だから、とにかく小さい頃のほうが楽しかったっていう印象しかないですよね。おやじのせいにしすぎなのかもしんないですけど。

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新潮社
2017-07-21

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神田松之丞“絶滅危惧職”講談師を生きる!

神田松之丞 /新潮社yom yom編集部 /杉江松恋

ここ数年、演芸ファンの注目を集め続けている男がいる。 神田松之丞、1983年生まれの33歳。90年代以降、東京の講談界では入門者の多くが女性であり、日本講談協会にも、もう一つの講談団体である講談協会にも、彼以降に入門して現在まで現...もっと読む

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コメント

zbl108 演芸界でもっとも熱い男、講談師・ 1年以上前 replyretweetfavorite

al4SPPNliqVCtSC これだよ 昨日ツレと呑んでた話題 他の経験ねえのが先生やっちゃいけねぇ https://t.co/gzyiaPZOhB 1年以上前 replyretweetfavorite

from41tohomania 神田松之丞さんのインタビュー、でyomyom連載原稿が読めます。現在、少年期~入門までの青春篇→ 1年以上前 replyretweetfavorite

krm39560411 演芸界でもっとも熱い男、講談師・ 1年以上前 replyretweetfavorite