このあいだ食事をする時、友人があるおしゃれな職種の社長と、その愛人を連れてきた。すごくきまっててカッコいいカップル、都会的でまるでハヤシマリコの小説に出てくるみたい。
私はすぐに帰るはずだったのであるが、こんなに濃いカップルと食事する機会はめったにないと思い、最後までレストランにいた。男性は中年で、女性もそう若くはない。ふつう不倫のカップルというと、女性がぐっと若いパターンが多いのだが、こちらは彼女も三十代後半、自分でいろんな事業を手がけているそうだ。ふーん、やっぱり長続きする大人のカップルってこうなんだヮと私は納得した。やっぱり女の方がちゃんと仕事を持ち、ある程度稼いでいないとね。
この頃、若い女のコが、「結婚前のアバンチュール」という感じでよく不倫をする。それはそれでいいけれども、こんな風に成熟したカップルにはならないはずだ。女の方でも自分の生き方を決めていて、結婚したがらない、子どもを産みたがらない、という風でなくては、いい感じのカップルにはならない。
もう二十年以上前、私がコピーライターをしていた頃の話だ。有名コピーライターがよく連れてくる愛人がいた。彼女もコピーライターであるが、私のようにきったはったのフリーランスではなく、大きいプロダクション勤務のOL であった。お嬢さまっぽい美人で一流大学を出ている。その彼女と、中年のブ男との組み合わせは、見た目にはあんまりよくなかったかもしれない。公認のカップルでもあり、いつも一緒にいろんなところにくる。
「何も奥さんも子どももいる、こんなおっさんとつき合うこともないのに。それでも業界の大物とつき合いたいもんかしら」
と私は冷ややかに見ていたのである。
ところがつい最近、青山で一緒に歩いている二人を見かけたのだ。男性はおじいさんになり、彼女もめっきり老け込んでいた。男の人が離婚したという話は聞いていないから、彼女はずっと愛人ということになる。
「二十年も!」
その間結婚もしなかったわけだ。あの楚々とした彼女に、よく強靭な意志があったものだと、私はちょっと感動してしまった。しかしあのおじさんのどこがいいんだろ?