謝ってほしいんじゃない。そんなこと言ってほしんじゃない!

仲直りした小森谷くんと彼女は、映画を観たり、家でビデオを観たりとデートを重ねる。だが、付き合い始めて三か月が経つころ、小森谷くんがとってきたよそよそしい態度が、彼女を怒らせることになる。
末期がんを宣告された男性の❝ありそうでなかった❞半生を描いた、『小森谷くんが決めたこと』を特別掲載!

 次の週末、彼と彼女はシネコンに出かけた。

「観たい映画はある?」

「うーん、私、あまり映画観ないからわかんないけど、モリくんは?」

「そうだな、この中なら、『スター・ウォーズ』かな」

「うん、それでいいよ!」

 もともと『スター・ウォーズ』を観ようと、このシネコンに来たのだった。『シックス・センス』はあの日だけのプレミアム上映だったので、この日は上映されていない。

 おなじみの音楽とともに、映画は始まった。

 天才アナキン・スカイウォーカー少年が、フォースの力に目覚めていた。

 だが少年は同時にダークサイドに墜ちる危うさをはらんでいた。中学生のとき、刃物を見つめていたときの気持ちを、彼は少し思いだす。

 エンドロールが終わると、最後にダース・ベイダーの呼吸音が流れた。

 彼と高山さんは劇場を出る人の列に並び、ゆっくりと歩を進めた。出口を出て列がバラけると、彼は二時間ぶりに彼女の顔を見た。

「どうだった? 高山さん」

「面白かったよ!」

 彼は『スター・ウォーズ』を存分に楽しんだが、高山さんも楽しんでくれたようだった。

 劇場を出てすぐに感想を言いあうというのは、彼にとって新しい体験だった。楽しさや感動を同時に共有するということに、彼の脳はプチスパークしていた。

「ダース・モールってさ、戦ってる間、一回も瞬きしてないんだよ」

 知る限りのスター・ウォーズのうんちくを、彼は語った。

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余命2か月といわれた男—小森谷くんが決めたこと

中村航

僕、余命2ヶ月って言われたんですよ。でも、生き残っちゃいましたけど――。末期がんを宣告された30代男性の“ありそうでなかった”半生を、「100回泣くこと」の著者・中村航が小説化!

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