2浪して学生数2万人の大学に入った

滑り止めの大学に合格し、大学生となった小森谷くんは、生徒数2万人という大学の規模に驚く。これから何をすればよいのかとぼんやり思っていた彼が惹かれたのは、オールラウンドという名前の飲みサーだった。
末期がんを宣告された男性の❝ありそうでなかった❞半生を描いた、『小森谷くんが決めたこと』を特別掲載!

 何だここは、と彼はその規模に圧倒された。

 最寄りの駅から十分ほどの道を上ると、大学のキャンパスに着く。丘陵地をそのまま活かした広大なキャンパスは、まるで一つの都市のような感じだ。

 学生だけで二万人いるらしかった。

 右も左も前も後ろも自分と同じような大学生で、その全てが見たことのない他人だ。これから百人の友だちを作ったとしても、それは全体の〇・五%に過ぎない。

 春のキャンパスを、二万分の一である彼はのそのそと歩いた。

 二年に及ぶ浪人生活を抜けだして、解放感と安堵に包まれていた。だけど自分の存在が数%程度に薄まってしまったように、この場所にいる現実感がなかった。

 テニスサークル、音楽サークル、サッカー部、空手部、茶道部、漫研、落研、天文部、航空研究会、文芸部──。

 年下かもしれない先輩たちによって、勧誘活動が熱心に行われていた。映画サークルには興味を惹かれたが、んー、そういうのはまだいいかな、と、静かに通り過ぎる。

 これから何をすればいいのだろう、という彼のぼんやりした意識にハマったのは、オールラウンドという言葉だった。

 オールラウンドサークルというのは、言うなれば飲み会をするサークルなのだろうが、勧誘には一番気合いが入っていた。彼はひとまずその新歓に参加してみた。

 パーリラパリラパーリラ! ハイハイ! パーリラパリラパーリラ!

 凄まじいコールと手拍子だった。それにあわせて先輩たちがビールを一気飲みする。

 パーリラパリラパーリラ! フワフワ!

 やがてお調子者の彼もビールを一気飲みしていた。

 パーリラパリラパーリラ! 飲みたいとか飲みたくないとかそういうことは、パーリラパリラパーリラ! フーフー! 全然関係なくてともかく飲めばいいみたいだ。

 ハイハイ! ハイハイ! パーリラパリラパーリラ! フワフワ! 頭が痛えー。

 何がフワフワだ! と思いながら、彼は飲み過ぎて倒れていた。気がつけば、その場で知りあった大迫くんのアパートで寝転がっている。

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余命2か月といわれた男—小森谷くんが決めたこと

中村航

僕、余命2ヶ月って言われたんですよ。でも、生き残っちゃいましたけど――。末期がんを宣告された30代男性の“ありそうでなかった”半生を、「100回泣くこと」の著者・中村航が小説化!

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