ゾンビ@大江戸温泉
ひろは目を疑った。
それは、紛れもなくゾンビであった。
光の消えた瞳孔。青黒く変色した全身の腐肉。腐乱した体はところどころ大きく損傷し、バックリと裂けた傷から骨がのぞいている。「゙ヴウ〜〜グワワ〜〜」とうめき声を発し、ズルズルと足を引きずりながらその生き物…………その死人は、ジェットバスまで辿り着くとゆっくりと浴槽に体を沈めた。
ここは、「大江戸シティ温泉日記」という公衆浴場である。江東区にある、ひろが贔屓にしているスーパー銭湯だ。しかし体を洗い終えたひろは、いつものよく喋るおじさんではない、生々しい方のゾンビの出現に驚愕しその場に立ち尽くした。
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