藤田貴大
吐くまで飲んで、サイコメトラー。
−彼女の温もりに触れた夜のこと−
【第20回】恋に落ちる瞬間って、どんなとき? まさか、こんな始まりがあるなんて、と思う紳士淑女はまだ修行が足りないのかもしれない。人肌が恋しいなら、深夜のカラオケ店へ? いやいやそうじゃなくて。とにかく、藤田センパイ(当時)に脱帽です。
道端に倒れこんでいる酔っ払いをやっぱりたまに見る。常識的なことをあえて言うならば、お酒はほどほどに飲むのが美味しいし。よっぽどのことがないかぎり、自宅以外で泥酔するまで飲むのはよくないですよ。と言っておきたいところだが。
カラオケ店でアルバイトをしていた時代があった。そこで毎晩のように見知らぬ誰かがトイレや店内で嘔吐した、その吐瀉物を処理していた。さいしょは、見るのも嗅ぐのも、ましてや触るのなんて。とうぜん、気持ちが悪かった。しかしその業務も淡々とこなすことができるようになっていき、いつしかなんともおもわなくなっていった。深夜のカラオケ店はある意味、居酒屋よりも酔っ払いが多い。なぜなら、とても単純なことで。9割以上の客は、飲んでから来店するからだ。そして、質の悪い焼酎で割ったチューハイだのなんだのを飲み放題にして歌いまくるんだから、そりゃあ、吐くわな。ってかんじだ。
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この連載について
藤田貴大
演劇界のみならず、さまざまなカルチャーシーンで注目を集める演劇作家・藤田貴大が、“おんなのこ”を追いかけて、悶々とする20代までの日常をお蔵出し!「これ、(書いて)大丈夫なんですか?」という女子がいる一方で、「透きとおった変態性と切な...もっと読む
著者プロフィール
1985年生まれ、北海道出身。桜美林大学文学部総合文化学科にて演劇を専攻、2007年に『スープも枯れた』でマームとジプシーを旗揚げ。2011年に発表した三連作『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』で第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2013年『てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。』で初の海外公演。さまざまな分野のアーティストとの共作を意欲的に行うと同時に、中高生たちとのプロジェクトも積極的に行っている。主な演劇作品は『あ、ストレンジャー』『cocoon』『書を捨てよ町へ出よう』『小指の思い出』『ロミオとジュリエット』『sheep sleep sharp』など。著書に『おんなのこはもりのなか』『Kと真夜中のほとりで』がある。