小指の爪が割れた。
ーぼくが一線を越えそうになる瞬間ー

【第16回】 夏の終わりに、「ぼくは女子になりたかった」と独白せざるをえないのは、なぜ? あの記憶もこの記憶も「男性」であることを意識せずにはいられない。そして、妄想のなかで勝手に女子を・・・。これは金木犀の匂いのせい?

たぶん足の小指の爪だろう。たったいま、割れたのだろう。小学生くらいの女子が、 道端で痛そうにしゃがみこんでいる。もう夏は終わったというのに、サンダルなんて履いているからだ。ぶあついレンズのメガネをかけていて、色白だ。初潮が始まったくらいだとおもう、痛がる口元の周りには産毛よりもすこし濃い毛が生えているし。 胸も、膨らみたてなかんじだ。

金木犀(きんもくせい)の匂いが漂う、ここは坂道だ。この坂道で、ぼくらはふたりっきりだ。しゃがみこむ彼女は痩せているから、首の骨が浮き出ている。彼女が小指の爪を割った隙に、彼女を連れ去ることもできてしまう、成人男性としての自分にゾッとする。

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おんなのこはもりのなか

藤田貴大

演劇界のみならず、さまざまなカルチャーシーンで注目を集める演劇作家・藤田貴大が、“おんなのこ”を追いかけて、悶々とする20代までの日常をお蔵出し!「これ、(書いて)大丈夫なんですか?」という女子がいる一方で、「透きとおった変態性と切な...もっと読む

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