パクチーは好きか嫌いか」という話から「正しさ」について学ぶ。

プロタゴラスが残した「人間は万物の尺度である」言葉を、パクチーを好きか嫌いか、美少女フィギュアを美しいと感じるか感じないか、という視点から学ぶ。書籍『(推定3000歳の)ゾンビの哲学に救われた僕(底辺)は、クソッタレな世界をもう一度、生きることにした。』より特別連載。


前回の授業で、「哲学の本は難しすぎる」ことを知った青年ひろ。「だからこそワシがいる」とゾンビ先生は豪語するが……。今回の哲学授業の舞台は、とんかつレストラン『矢部とん』。授業のテーマは「正しさとは何か?」

ゾンビは人肉は食べられるが豚肉は食べられない

「確認なんですけど、ゾンビ先生は古代ギリシアの生まれなんですよね? そこでゾンビに噛まれて死んじゃって、哲学ゾンビに転化したと。で、かれこれ2000年以上ゾンビ暮らしをしていると」

 ひろはゾンビ先生に視線を合わせたまま茶をすすった。

「なぜ藪から棒にそんなことを聞く?」

「なぜって、『人は生まれながらにして知ることを欲す』ですから! ということは先生はギリシャ人なんですか? 本名は? 本籍は? 本業は?」

 二人が席を並べているのは築地の北にあるとんかつレストラン『矢部とん』店内である。ゾンビ先生から「美味しいとんかつ屋さんへ行ってみたい」と依頼があり、ひろの休日を見計らいやってきたのだ。

「ひろよ。おまえは自分が2歳の時にどんな暮らしを送っていたか、憶えておるか?」

「2歳の時? 覚えてるわけないでしょ。20年も前なんだよ? なんの記憶もなし!」

「ではわしに2500年前の記憶を求めるのはお門違いよ。2500年……、20年の125回分じゃ。出会った者、別れた者。思い出すには、あまりにも長い」

「ふーん。そんなに長い間、人を食べて生きてきた、じゃなくて死んできたんですね。今までで合計何人くらい食べたんですか?」

「そんなもん知るわけないじゃろ。では聞くが、おまえは今まで食べたとんかつの枚数を覚えておるのか?」

「いや、そう言われると困りますけど。ていうかそのセリフ『ジョジョの奇妙な冒険』のパクリですよね? 『おまえは今まで食ったパンの枚数をおぼえているのか?』ってありましたもんね。うわ〜盗作〜! うまいこと言ったつもりでドヤ顔になってるけど〜〜本当は人のセリフをパクっただけなんて〜〜先生かっこ悪〜い!」

「うるさいわいっ!!」 ガブリッ!

「なにをするだァ—(涙)!!!」

「……安心せい。甘噛みじゃ」

「甘噛みでもやめてっ!! ゾンビに腕を噛まれるってビジュアルインパクトがすごすぎるから!! やるんなら他の体罰にしてください!」

「もちろん、忘れないものもあるさ。アゴラに始まり、大陸各地で共に議論を繰り広げてきた哲学の論客たち。彼らの思想。それからわしの哲学授業を受けた教え子たち。あいつらのことは忘れようとしても忘れられんよ」

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ゾンビの哲学」に救われた僕は、クソッタレな世界をもう一度、生きることにした。

さくら剛

さくら剛の超・哲学入門! 「とっつきにくくて、わかりにくい」、「でも、人生の役には立ちそう」。本書は、そんなやっかいな哲学を「冴えない青年“ひろ”が、古代ギリシア生まれの哲学者“ゾンビ先生”から学んでいく物語」です。哲学とは? この世...もっと読む

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