ここは、女の好きなモノだけでできている。
南ヨーロッパ風のダミー煉瓦でできた建物。白亜の壁、高い天井、陽光を取り入れた窓、シャンデリア、庭には緑の芝生、青いプール、サマーベッド、フラワーガーデン。インスタ映えだけを考えたようなインテリアとオブジェは、女の心の中にあるときめきを沸々と呼び覚ます。やがて着飾った男女が集まって、口々に祝福の声をあげる。女たちは、その空間を歩くだけで、物語の主人公になったような気になる。そう、ここは結婚式場。なんの変哲のない女をヒロインに変える特別な魔法の場所なのだ。
いまでは珍しくなくなったが、若い人たちの間で人気のハウスウェディングは、それまでのホテルウェディングとかレストランウェディングとは違う、結婚式のためだけに用意された一軒家を使う。00年代から日本中に広がり始めて、都内にも地方都市にもいくつかある。
80年代頃にさまざまな地方を中心にあった、ラブホテルの延長のようなハリボテ感漂う結婚式場の建物とは本気度がちがう。
技術の進歩が魔法のレベルをあげ、結婚式という一生に一度、最大限の魔法をかけたいイベントの日向けの会場として、多くのカップルに利用されている。
皆さんも、SNSなどで、お洒落して南ヨーロッパ風の建物の中でシャンパン片手にはしゃいでいる写真をみたことがあるかもしれない。部外者からみたら、外国かなと思うけど「場所:豊洲」とかになっていて、不思議に思う投稿は、だいたいこういう施設での写真だ。
ちなみに結婚式が入っていない日のハウスウェディング会場は、撮影スタジオとしても使用されていて、非日常を演出する空間は、なかなか使い勝手が良いものらしい。(参考:ハウスウエディング)
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