エロ詩吟が生まれた瞬間
コンビを続けると決めても、生活は何も変わりません。M-1決勝に残ってないからテレビなどの露出も増えない。露出が増えないということは、仕事が増える訳でもない。むしろ勢いのある後輩芸人のパワーに圧倒されて、天津の仕事はゆるやかに減っていってしまいました。
そしてこの時期に、木村くんは結婚しました。僕はビックリしました。長く付き合っている彼女がいるのはわかっていましたし、もうそろそろ結婚するつもりだという話は聞いていました。木村くんが家族を作って奥さんになる人を幸せにしたい、と思っているのも知っています。
ただその時、僕に涌き起こった気持ちは正直こうでした。
『馬鹿じゃないの?』
一番しんどいこの時期に結婚って、どういうことなんだ。こいつは今、置かれている危機に気付いていないのか。そんなやつと、一体どうやってコンビを続けていくんだ。
現にテレビの仕事が新婚旅行の日程とかぶって無くなってしまった時なんて『やっぱりあの時解散しとけば良かった! クソが!』とイライラしていました。
そういう状況なので、仕事と給料はどんどん減っていきました。給料でいえば、ひどい時は月収9万円という時もありました。芸人10年目の人間が9万円。貯金もゼロ。当時の家賃は6万5千円ですから、もう生活なんて無理です。そもそも、バイトをしなきゃいけないくらいの給料の時からやりたくないというだけの理由で、サラリーマン金融からお金を借りていた僕は、この『給料9万円』の時期にまた借金を増やし、借金の最大額が300万円になっていました。
サラ金ではもう借りられないという額になったため『吉本ファイナンス』からお金を借りる羽目になっていました。『吉本ファイナンス』というのは芸人にお金を貸すよしもとのグループ会社です。年収などを把握されている分、ちゃんと返せるであろうラインのお金を貸してくれます。返す額は月々給料から引かれていきます。返さなくても引かれる。これは見事なやり方だなと思います。が、あのケチで有名な吉本からお金を借りる。なんて情けない状態なんだ、と思いました。
そこから、サラ金などの利子10万円弱を毎月払い続けていました。
そんな状態で、僕は芸人を続けていました。
その時の唯一のレギュラーが、麒麟さんがパーソナリティをやられていた深夜のラジオでした。それも、麒麟さんが僕らを可愛がってくれていたから入れてもらった仕事です。
そのラジオのOA中、麒麟さんに「向はオタクキャラがあるけど、木村にはキャラがない。何かキャラをつけて、エンタの神様の出演を目指そう」ということを言われて、木村くんはいろんなキャラを試しました。
以下、当時試していたキャラです。
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