オカルト、というものを信じたことは一度もない。
子供の頃、よくテレビで怪談特集のようなことをやっていたが、おもしろく観こそすれ、本気で怖いと思ったことはない。死後の世界も信じてないから、ほとんど信仰心もない。ホラー映画は今でも大好きだが、怖いというより笑うために観ているフシがある。実際、幽霊より、隣に住んでいたアルコール依存症の大工の方がよっぽど怖かった。うちにお呼ばれして酔っぱらっては、自分の家と鍵の向きが違うため我が家のトイレに勝手に閉じ込められ、
「誰や! 外から鍵かけとるやろ! 出さんか! こら」
と、大暴れするのだ。
大工といっても、屋根から転がり落ちて、ずっと生活保護を受けている人で、働いているところなぞ、ついぞ見たことはなかった。だからってことはないが、人はいいけどバカだった。うちの近所にはなぜか屋根から転がり落ちる大工が多かった。そういう意味では、負のパワースポットだったと言えなくもない。
昔、かなり精神世界に傾倒した女性と暮らしていた。彼女は、
「昨日、道であきらかな魔女と会ったからお茶して来たの」
というような人であり、別れた後彼女は、神様のために太鼓を叩く仕事をするようになった人でもある。うん、よくわからない。
一度、集会というものに連れて行かれたことがある。
500人ほどのキャパのホールで宇宙人とチャネリングする外人を見る集会だ。どこから来た宇宙人かは忘れたが、その当時、エジプトのピラミッドの上空に停まっているUFOに乗った宇宙人が、その外人に憑依して、いろんな預言をするということだ。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。