5月1日、僕たちは結婚2周年を迎えた。
妻のお母さんから電話がかかって来た。
「2周年? よく持ったわねえ!」
びっくりされることなのか?
でも、まあ、気持ちはわからないでもない。それくらい、僕の住んでいる世界は、M子にとって異世界だったらしく、仕事や人間関係に対する価値観の違いから、幾度となく喧嘩を繰り返しても来た。
僕、僕、と、大人しそうな一人称で書いているし、実際、かなり静かなタイプではあり、この間も、蕎麦屋で、アメリカ人が蕎麦湯をざる蕎麦にかけようとしていたので「アフター! 蕎麦湯、イート・アフター・ドリンク!」と声をかけてあげられるほど優しい人間でもあるのだが、所詮九州でも一番気質の荒い北九州生まれの男子、いざ喧嘩となると壮絶な感じになる。
壮絶であるほど、50過ぎての喧嘩はしんどい。
翌日の身体に響くのである。別に殴り合いの喧嘩をしているわけではないが、自律神経に失調をきたし、ベッドから起き上がれなくなるのだ。
だから、なるたけ喧嘩は避けたい。それがために、喧嘩の火種になりそうな話題は、つい秘密にしてしまう。その秘密を暴かれそうになると、ついつい、嘘をついてしまう。となると、嘘が大嫌いな妻は、とことんそれを追及し、また、大喧嘩になってしまうのだ。僕は「だいたい」で生きて来た人間。妻は「厳密」で生きて来た人間(実際この連載でも、僕の曖昧な記憶による記述は逐一チェックされ正されている)、そのギャップが火に油を注ぐ。
「あれほど、嘘をつかないでって言ったでしょ!」
「だから、嘘をつかせるのは誰なんだよ!」
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