東京の夫婦

東京の片隅で。[第十八回]

「大人計画」を主宰し、作家、俳優として活躍する松尾スズキさん。2014年に「普通自動車免許を持った一般の女性」と再婚した松尾氏がその結婚生活を綴ったエッセイ「東京の夫婦」の連載がスタート。第十八回は世間が押し付ける「当たり前」という思考について。イラストは近藤ようこさんです。


「おかまに行政支援は不要」
 最近、高い教育を受けているはずの人間の痛い発言をよく耳にする。

 いや、最近ではないな、高い教育を受けている=弱い立場の気持ちがわからない、みたいななんというかもう、高等教育そのものが人間の想像力を奪う構造になっているんじゃないかと思うほど、頭を抱えるようなことを言う人がちょいちょいいて、自分は偏差値の低い大学を出ておいてよかったとすら思えてくる。

 冒頭の発言は、新潟県のある市議が、地元のFM放送局のオネエキャラの男性パーソナリティについて「おかまと聞いている。正常な形でない人を行政が支援する必要はないのではないか」と言ったものだ。市の広報番組への制作委託料に関する話なのだが、いろんなことをこの人は間違っている。

 まず、市の広報番組を制作委託するためのお金は支援じゃない。対等な取引だし。ましてや、そのオネエキャラの人にすべて支払われるお金じゃないし。おかま=正常な形でない、という紋切り型の表現もどうかと思うし、正常な形でないものには、ギャラなんか払わなくてよいのだ、という根本的で絶対的な差別意識がそこにあるし。

 アドルフ・ヒットラーのことを少しでも知っていれば、そのような「ノーマルでないもの」に対する差別がファシズムの根幹と大いに関わっていることくらいわかるでしょう。さらに追い打ちをかけるようにこの人は、「自民党公認候補者は、党の『男は男らしく、女は女らしく』という伝統的な家族観を広める立場にある」という暴言まで吐いて言いわけしておるのだ。だとしたら、あのゲイ臭のプンプンしている武藤議員や、岩松了さんそっくりの「やる気 元気 イワキ」の井脇ノブ子さんは、なんで自民党に入れたのかとか。あんなに男らしい女性、そうそう、町で見かけませんが。そもそも、自民党がそんな柔道部みたいな価値観を掲げているの聞いたことないし。多くの自民党員も驚いているでしょうよ。

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松尾スズキが綴る、東京の夫婦の軌跡

東京の夫婦

松尾スズキ
マガジンハウス
2017-08-10

この連載について

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東京の夫婦

松尾スズキ

東京で家族を失った男に、東京でまた家族ができた。夫は、作家で演出家で俳優の51歳。妻は、31歳の箱入り娘。 ときどきシビアで、ときどきファンタジーで。 2014年に「普通自動車免許を持った一般の女性」と再婚した松尾スズキさんがその結婚...もっと読む

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コメント

bear_yoshi 「ある人にとって当たり前のことが、別の人間には当たり前ではない、ということを想像できない、「だって、当たり前だから」という考え方。僕は、野蛮な行為だと思う。」 /  2年以上前 replyretweetfavorite

yu_llri 松尾さんに出馬してほしいと思ってしまった。もう日本はだめなのだ。私のように海外移住を選択する者は今後益々増加する。→ 2年以上前 replyretweetfavorite

gaendo 松尾スズキの 2年以上前 replyretweetfavorite

ayasasaki108 心の中の野蛮…あるな 2年以上前 replyretweetfavorite