東京に来て30年、というのを考慮に入れてもあきれられるほど引っ越しをして来た。
引っ越しはめんどくさい。転入転出届に関わる役所作業、家賃の自動振り替えの停止と開始。とくに個人情報とかセキュリティとかの時代になって来てから、ネット環境の移転は、毎回、なにかのパスワードが思い出せず、右往左往した結果、必ず、再発行の泥沼(これがまた最近、大文字を入れろとか、数字を入れろとかでより複雑になっている)にはまる。いつから、日本人はこれほどにパスワードの奴隷になってしまったのか。ドラクエの復活の呪文あたりか。とにかく引っ越しはやっかいだ。が、僕は東京に来てからずっと、女の人と住んだり住まなかったりを繰り返して来たので、必然的に、別れるたびに部屋のサイズを変えねばならず、毎度やむなく引っ越す羽目になるのである。
10数年前、1度目の結婚のとき、三宿に家を買ったので、さすがにもう引っ越さないだろうと思ったが、それからも、4回引っ越している。まったくどういうことだ?
再婚して、今のマンションに引っ越して3か月。ここは長くなると思うし、力ずくでもそう思いたい。マンションの17階の角部屋で周りに一切高いビルがなく、晴れた日には富士山が見えるほどに眺望が最高だし、賃貸であるが新築なので、住んでいて気持ちがいい。なんといっても、代官山には、鮮魚コーナーを歩くと生臭い臭いに包まれる高い割に品揃えの悪いスーパーが1つ。今の町には、手頃なスーパーが3軒もある。
近所にスーパーが3軒!
ミュージカルなら道の真ん中で踊り出すところだ。
で、引っ越し作業はおおむね終わったのだが、やっかいなことがひとつ残っていた。7年ほど前に出て行った三宿の家は、その後、知人に売ったのだが、その一室に、何年も、膨大な量の荷物を置かせてもらっていたのだ。
この間、それをやっと、業者に頼んで持ってきてもらったのだが、段ボールにして40箱。ただでさえ収納が少ない我が家は、引っ越した状態に逆戻りしたかのように段ボール臭くなった。