東京の夫婦

北九州ってどんなところ?[第十二回]

「大人計画」を主宰し、作家、俳優として活躍する松尾スズキさん。2014年に「普通自動車免許を持った一般の女性」と再婚した松尾氏がその結婚生活を綴ったエッセイ「東京の夫婦」の連載がスタート。今回はお互いが生まれた町について。イラストは近藤ようこさんです。


 ある日、僕は茨城出身の妻に言った。
「茨城って、日本で唯一、県名を間違えても許される県じゃない?」
「え? どういうこと?」M子が聞いた。 「いばらき、が、ほんとの読み方だけど、いばらぎ、でも、だいたい問題ないでしょ」

 実は、M子と出会うまで、ずっと「いばらぎ」だと思って生きて来たのだ。
 「問題ないことないよ。県名間違うって」
 M子は口を尖らせた。

「だって、あなたのお父さんだって『いばらぎ』ってときどき言うんでしょ?」
「お父さんはだって、もともと横浜の人だし」

でも、住んでる人も間違うってことは、やはり、僕にとっては、よその県の人に間違えられてもしょうがないくらい「いばらぎ」という言葉には、なんというか、安定感があるのだ。ネットで調べてみると、アナウンサーですらたまに間違うという。

「いばらき」
「いばらぎ」

 比べて発音してみると、ナレーターの仕事をしている僕としては「いばらぎ」の方が、音にしまりがあって嚙みにくい。つまり、口に座りのいい言葉なのだ。

 「群馬を『ぐんば』って言ったら変でしょ。でも『いばらぎ』はスルーできる範疇だと思うけどなあ。『いばらき』って元々『いばらぎ』だったんじゃない? それを、ズーズー弁でなまってるみたいでかっこ悪いっていうんで、誰かが『いばらき』に……」

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松尾スズキが綴る、東京の夫婦の軌跡

東京の夫婦

松尾スズキ
マガジンハウス
2017-08-10

この連載について

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東京の夫婦

松尾スズキ

東京で家族を失った男に、東京でまた家族ができた。夫は、作家で演出家で俳優の51歳。妻は、31歳の箱入り娘。 ときどきシビアで、ときどきファンタジーで。 2014年に「普通自動車免許を持った一般の女性」と再婚した松尾スズキさんがその結婚...もっと読む

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コメント

ukopade ふわっとした町。 約3年前 replyretweetfavorite

mame623 ふふ笑て言いながら読んだ。わかる。> 約3年前 replyretweetfavorite

akyska ”フワーッとしたイメージしか持ちえない町から出て来た二人が出会って、東京に住んで、「東京の夫婦」ってタイトルのエッセイをこの最先端のファッション誌である『GINZA』って雑誌でかれこれ1年書いているわけです” https://t.co/w0vbn1E2H2 約3年前 replyretweetfavorite

guriguri1998 私は松尾さんと同い年で、その折尾(おりお)のJRでいうと隣りの駅の黒崎の生まれ。育ちはやっぱり折尾の近所の穴生(あのう)。この話、よくわかるww 松尾スズキの 約3年前 replyretweetfavorite