秋。
土岸カップルのいちゃつきは炸裂し、留まることを知らなかった。
自分にも彼女がほしい、と彼は強く思った。だが、それには告白しなければならない。
幼稚園のときに好きだったちなみ先生に告白して、その六年後にまあまあ好きだった牧原さんに告白して、今はちょうどまたその六年後だった。
たまたまだけど、こういう偶然は大切にしなければならない。人生三度目の告白を、自分はしなければならない。
でも誰に?
彼は真剣に考え、同じクラスの森さんにターゲットを絞った。
クラスで一番仲の良い女子だった。正直、そんなに好きではなかったけれど、ずっと気にはなっていた。
自分と森さんなら、いいカップルになれる予感がした。二人だったらきっと、愉快でスイートに歩いていける。結婚したっていいんだ、と彼は思う。
彼の中にもすっかり土岸イズムは息づいていて、決めてからの行動は早かった。
行くと決めたら、迷っているヒマはない。愛車のDioを三十分ほど走らせたところに、森さんの自宅はある。
近くのコンビニから電話をし、彼は彼女を呼びだした。
もの凄く緊張していた。だってこれは自分の一生を決めるようなできごとなのだ。
今度こそ、告白を成功させなければならない。
怯みそうになる心の奥で、土岸イズムを確認した。
あいつみたいに、なりふり構わずぶつかって行かなきゃ駄目だ。突撃あるのみだ。土岸みたいにならなきゃだめだ。
勇気を振り絞り、自分の精一杯の思いを、優しさで包んで相手に届けるのだ。
「いや、実はずっと好きでした」
彼は森さんに思いを伝えた。
「えー! そうなの? 全然知らなかった」
彼女はとても驚いた様子だった。
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