小中学校時代の好きな人に会おうツアー

夏休みが終わっても、夏休みのような日々は続く。小森谷くんは、必要最低限しか学校に行かず、遊んでばかりいた。そんな冬のある日、土岸が提案したのは、小中学校時代の好きな人に会いに行くというもの。小森谷くんは、中学時代にチョコをもらった思い出がある中西さんに会いに行くことにする。
末期がんを宣告された男性の❝ありそうでなかった❞半生を描いた、『小森谷くんが決めたこと』を特別掲載!

 夏休みは終わったけれど、その後もたいがい夏休みのような日々が続いた。

 ときどき二、三十分かけて八王子や立川に行き、カラオケをする。お気に入りのミスチルを彼は熱唱する。誰かの家で丸一日飲んだり、ゲームしたりして遊ぶ。

 野ザルのスタイルはそのままに、日々はだらだらと、だけど駈け抜けるように過ぎていった。

 怒られたり処分をくらったりする寸止めのラインを見極めながら、学校には帳尻あわせのように通った。

 テスト前になると、赤点にならないことだけを目標に勉強をした。三年生になったら、真面目に勉強しようと思っていた。

 秋。

 体育祭のあと、たいして何もしていないくせに打ち上げと称し、生まれて初めての女子を交えた飲み会をした。

 土岸の友だちのユニークな女の子が、ドリアンで作ったケーキという、恐ろしい食べ物を持ってきた。

 冬。

 土岸の提案で「小中学校時代の好きな人に会おうツアー」というのが行われた。

 まずは土岸が中学生のときに好きだったという、山本さんに会いに行った。

 えー、何、何、何? と驚く山本さんに土岸は、「中学のとき好きだった人に会おうツアー」をしてるんだよ、と、しゃあしゃあと言った。

 えー、なにそれウケる、あははははは、と山本さんは快活に笑った。

 彼はかつてチョコレートをくれた中西さんに会いにいくことにした。好きだった石澤さんは誰かと付きあっていると聞いていたから。

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余命2か月といわれた男—小森谷くんが決めたこと

中村航

僕、余命2ヶ月って言われたんですよ。でも、生き残っちゃいましたけど――。末期がんを宣告された30代男性の“ありそうでなかった”半生を、「100回泣くこと」の著者・中村航が小説化!

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cucciolo_rs16 次回更新が気になる https://t.co/25QW80Ea4o 約3年前 replyretweetfavorite