猛省した翌朝、久しぶりに時間通りに登校する

一人で育ててくれた母の涙は、小森谷くんにかなり堪えた。もう二度と、食い逃げや犯罪なんてしない。これからは真人間になるんだ、と心に決めた彼と土岸は、まずは学校にきちんと通うようになった。しかし、その後の彼らを待ち受けていたのは、誰もが浮かれる夏休みであり……。
末期がんを宣告された男性の❝ありそうでなかった❞半生を描いた、『小森谷くんが決めたこと』を特別掲載!

 翌日の朝、久しぶりに、彼は時間通りに学校に行った。

 こっちを見て驚いた顔をするクラスメイトに、おっす、おっす、と挨拶しながら、自分の席に着く。

「おー、早いな、モリ」

「おお、お前もな」

 隣の席には土岸が座っていた。テストでもないのに、二人が揃って始業前に学校にいるというのは、なかなかの珍事だ。

「昨日、まじでおれが悪かったよ」

 土岸は真面目な顔をして言った。

「母ちゃんにも謝っといてくれよ。もう二度としないって」

「ああ。だけど別に、お前だけが悪いわけじゃないからな」

 小森谷くんは、ふう、と息をついて、椅子にもたれた。

 三人で悪いことをして、三人で怒られるのはまだよかった。殴られてもよかったし、何年かタダ働きをしてもよかった。

 だけど、いちばん傷ついたのが母親だったことは、さすがに堪えていた。

「お前の母ちゃん、ゆうべは大丈夫だったか?」

「……ああ」

「泣いてたりしてなかったか?」

「……夜中まで泣かれたよ」

「そうか」

 不思議な感じだった。眉根を寄せた土岸が少し苦しそうな表情になって、彼を見つめている。彼の母親を泣かせたことに、土岸が痛みとか責任を感じている。

「お前んちは、大丈夫だったのか?」

「ああ。うちは事後報告だけだから。がつんと怒られたけど」

 今まで悪いことをした代償は、怒られたり、何か自分に不都合なペナルティを課せられたり、といったことだった。だがそんなのは凄く小さなことだった、とわかった。

 ショックを受け、傷つく母親の姿は、もう二度と見たくなかった。

「真人間になろうぜ」

 と、土岸が言った。

「ああ、そうだな」

 と、彼は頷く。

 久々に時間通り学校に来た二人は、本気だった。

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余命2か月といわれた男—小森谷くんが決めたこと

中村航

僕、余命2ヶ月って言われたんですよ。でも、生き残っちゃいましたけど――。末期がんを宣告された30代男性の“ありそうでなかった”半生を、「100回泣くこと」の著者・中村航が小説化!

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