高校時代、「ファミレスでステーキ食い逃げ」をやってみた

高校生の小森谷くんは、土岸と丸山という友人と3人で、ファミリーレストランに来ていた。高校生になったばかりの彼らに、ステーキセットと食後の珈琲、デザートは簡単に払える金額ではない。彼らがとった、真似してはいけない行動とは、なんと食い逃げをすることだった!!
末期がんを宣告された男性の❝ありそうでなかった❞半生を描いた、『小森谷くんが決めたこと』を特別掲載!

「おお! 肉汁だ」

「したたり落ちるね!」

 彼と土岸と丸山は、ファミリーレストランでサーロインステーキのセットを食べた。

 この後に待ち受けるエキサイティングなイベントに、彼は萎縮していたのだが、肉を食べ始める頃にはすっかりリラックスしていた。

 神経が図太い土岸は、最初の注文のときから、あまりにも堂々としている。

 夜七時のファミリーレストランは、家族連れやカップルでごったがえしていた。彼らのような制服の高校生も何組かいる。

「美味かったな。満腹だよ」

「ああ」

 ステーキを食べ終えた土岸は、満足したようにソファーの背にもたれた。丸山はさっきからずっと、にやにや笑っている。

 やがて彼らの前に、コーヒーとデザートが運ばれてくる。

 小森谷くんはクリームあんみつで、土岸と丸山はブラウニーサンデー。

 食後に甘いものを食べたりコーヒーを飲んだりする習慣など高校生になったばかりの彼らにはなかったが、こういうのはもののついでだった。

 何を頼んだって、彼らの罪や運命は大して変わらないのだ。

 三人はほとんど無言でデザートを平らげ、コーヒーを啜った。ステーキの脂質とデザートの糖質が、彼らの満腹中枢を存分に刺激した。

 だが彼は少しずつ緊張し始めている。

「……さて、と。じゃあやるか」

 土岸は、にやり、と笑った。

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余命2か月といわれた男—小森谷くんが決めたこと

中村航

僕、余命2ヶ月って言われたんですよ。でも、生き残っちゃいましたけど――。末期がんを宣告された30代男性の“ありそうでなかった”半生を、「100回泣くこと」の著者・中村航が小説化!

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marekingu #スマートニュース 約3年前 replyretweetfavorite