バングラデシュから脱出せよ! 身の危険を感じたテロ事件

バングラデシュでテロが起き、世界一危険な職場「船の墓場」取材は中止を余儀なくされる。いまいちばん”トガってる”異色の旅番組『クレイジージャーニー』出演中の危険地帯ジャーナリスト、丸山ゴンザレスが満を持しておくる『世界の混沌を歩く ダークツーリスト』より、バングラデシュ「船の墓場」完結編をお届けします!

「コーランを暗唱できた人は助けられた」

 テロの起きた翌日、信じられない量の着信とメッセージがスマホのディスプレイに表示されていた。日本にもこちらの様子が伝わってしまったようだ。これはいよいよ腹をくくらねばならない、そう思った。

 まずは情報収集をするためにロビーに降りる。すでに警察官が来ていた。フロントに行ってホテルの人間に話を聞いたり、宿泊客と話したりしたところ、現地でパニックが起きるということはなかったようだ。だが、妙に冷静な警察官の姿が、かえって事件の深刻さを物語っていたように思う。

「私たちの護衛力では不測の事態に対処できない。なるべく早く、この街を去ったほうがいい」

 この警察官の言葉が決定打だった。ここで取材を中止する決定を下すことにした。

 バングラデシュ国内のテロ事件は、非イスラム教徒や外国人をターゲットにしたものである。つまり、私や、同行した『クレイジージャーニー』のディレクターがテロのターゲットになることはあっても、警察や一般市民が巻き込まれる確率はかなり低いのだ。

 そんな状況であれば、警察の冷静さも納得できる。だが、事情がわかったところで、現実が変わるわけではない。

 本音を言えば、このままバングラデシュに残って取材を続けたかったが、留まることがリスクである以上、無茶をすることはできない。

 慎重に周囲をうかがいながらホテルを脱出し、すぐに空港へと向かった。

 テロの発生後、ホテルに来た警察官が同行してくれていた。私たち日本人の間だけだったのかもしれないが、恐ろしいほどの緊張感が漂っていた。当時の報道に、「コーランを暗唱できた人は助けられた」というものがあったからだ。つまり、ムスリムならばテロリストに接しても助かる可能性がある。しかし、外国人ならば高確率で殺される。そう思うと嫌でも顔が強張ってくる。

 情報と想像力が私たちを追いつめるなか、空港へ向かう車窓から目に入ってきたのは、いつもと変化のないチッタゴンの街の風景だった。

 テロが起きても、市民たちはいつもと変わらない暮らしができる。テロが起きることは、当たり前の日常だったりする。

 そう思えば思うほど、どこにいても危ないような気がしてきた。だからこそ、帰国するまでのルートは安全第一でありながら、できるだけ現地滞在時間の短いものを選択したかったのだ。

 国外への脱出ルートとしては陸路もあったが、イスラム過激派の影響下にある(とされる)場所を通過することになるため、空路を選択したのだった。

 私たちがホテルを発ってから24時間後、バンコクのスワンナプーム空港に着いた。日本到着より、この瞬間のほうがホッとしたことをよく覚えている。

労働者たちの叫び

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