こんにちは、外科医の雨月メッツェンバウム次郎です。
全国的に梅雨が明け、いよいよ本格的に夏が訪れました。社会人になってからというもの、季節は夏になってもめっきり季節を感じることが少なくなってしまいました。夏はもともと花火やお祭り、そして蛍を見に行くなど風情を感じるイベントが多いですね。たまには白衣を脱いで遊びに行きたいものですが、我々外科医にとっては土日であっても「遠出をする」という行為自体が罪悪感を感じてしまうのです。それは、「自分がメスを入れた人がもし不在時に急変したらどうしよう」という気持ち。そんなこと言っていると一生どこにも行けないのですが、よっぽどでないと遠出をしない外科医も大勢います。因果な職業です。
先日のこと。私はある学会に参加しておりました。学会っていつも昼は研究の話を発表したり議論したりするのですが、夜はだいたい知己の医師同士で酒を酌み交わします。そういう時は病院単位あるいは医局単位で飲むのですが、知り合いの先生を連れてきたよ、なんて具合に色々なところの医師が集まった混戦になることがよくあります。そこで交流をし、新しい人事のきっかけになることがあれば、共同研究をすることもあります。
私も御多分に洩れず、同じように学会の夜にある地方都市で飲んでおったのです。そこでちょっと歳上の外科医が参戦してきました。初めのうちは親しげにいろんな話をしていたのですが、途中からその男、酔っ払って怪しい雰囲気に。
ちょいとからみ酒のようで、
「おたく、ちゃんと手術やってんの?」だとか、
「きちんと治療してる?」なんて具合に私に絡んできました。私はそういう時なかなか冷静でして、こんな酒を飲みながらの議論をしても無意味と決め込んで
「ええ、まあそれなりに」という風に流していたんですよ。ああコイツ自信が無いんだな、と思いながら。すると、私のリアクションがイマイチ物足りなかったのか、
「あのな、俺の病院はいま日本の中心だからな」と言い出したんです。それからいかに自分がすごいか、自分の病院のレベルが高いかという話をし続けました。あまりに長くしつこかったので段々面倒になり、酔っていたこともあって一発殴ろうかとも思ったのですが、狭い世界で一年に何度も顔を合わせるのでそれも気まずく、外科医には所属が違えど鉄の上下関係がありますから黙ってその場をやり過ごしました。おお、なかなか私も大人になったもんだ、なんて思いつつ。
そこで、今回は自慢する人についての考察をしたいと思います。皆さんの周りにも一人や二人、自慢体質の人はいるでしょう。聞いてもいないのにあれこれを自慢してくる人。
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