尾崎世界観「音楽での悔しさを、一瞬紛らわせるための劇薬だったはずなのに」

人気ロックバンド・クリープハイプの尾崎世界観さんが『苦汁100%』を上梓しました。帯コピーには、「作家・尾崎世界観が赤裸々に綴る、自意識過剰な日々」。一見、自意識過剰を感じさせない文章ですが、そこには尾崎さん独特の自意識の使い方がありました。自分の感情との向き合い方、そして、煮詰まった感情を言葉にする姿勢について話を聞きました。

『苦汁100%』の表紙に巻かれた帯の惹句には、「作家・尾崎世界観が赤裸々に綴る、自意識過剰な日々」とある。が、話を聞くかぎり、カッコつけて虚構の自分を見せたがるような自意識過剰とは、すこし違うような気がしてくる。

 自意識がたっぷりなのは間違い無いんですけどね。自意識を抑えようとする気持ちが、異様に過剰なのかもしれないです。自意識過剰100%の人が、自分の自意識を上方向に100伸ばす、だから自意識が突出して目立つとするじゃないですか。僕の場合は、自意識をまず50だけ上に伸ばして、そこから下に向けて必死に50抑えようとしてしまう。それでぱっと見は自意識過剰には見えないんだけど、結局100%自意識に振り回されていることには変わりないというか。無駄な方向に自意識を使ってしまっていますね。

 昔からそうですね。違う視点のふたりの自分が、ひとつの身体のなかに同居している感じです。歌詞をつくるときも、ひとりは熱くなって歌詞を書いて、もうひとりは冷めた視点で審査員みたいな役割をする。それで、その審査に合格したら作品にしているんです。

読んでいて、自分が自分が、と自己を主張することが少ないのも、自意識をストレートに感じさせない原因に思える。『苦汁100%』では、自分のことじゃなくて、他の人のことばかり書いている印象もある。

 周りの人が結局、自分を最もよく表すのだと思います。周りのことを書くと、いまの自分が見えてきますね。書きたくなる人がいっぱいいる時期は恵まれているのだろうし、だれかのことを書こうという気持ちがあるときは、精神的にいいときです。

ライブのことを書くにしても、自分がステージでしたことよりも、最前列のお客さんの表情がどうだった、みんなの反応がよかったといったことを中心に書いている。

 そうですね、お客さんは鏡みたいなものですから。練習やリハーサルのスタジオには基本的に鏡があって、自分の姿を見ながら歌うので、ライブをやっているときも変わらない感じでやっています。お客さんを見ていると、自分の状態というのははだいたいわかる。

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苦汁100% (文春e-book)

尾崎世界観
文藝春秋
2017-05-24

この連載について

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文学者の肖像

山内宏泰

文学とは、なんなのか。文学者たちは今をどうとらえ、いかに作品に結実しているのか。言葉に向き合う若き作家たちの「顔が見える」インタビューシリーズです。

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コメント

reading_photo 【掲載中】「文章というものを書けていなかったら、きっと音楽もやめてしまっていた」。書くことは尾崎さんにとって大きな一部なんですねきっと。cakes 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

kojiyamada @KotaroA にお薦めされた、@ozakisekaikan さんの『苦汁100%』を読了。 日記形式で、1日1日の感情のゆらぎや他人を見る視点が刻まれてて、なんだか追体験している気分になる一冊。 https://t.co/wLiaQX3xhn 約2ヶ月前 replyretweetfavorite

creephyp 【メディア情報】 昨日に引き続き、電子書籍「cakes」『文学者の肖像』企画 尾崎世界観インタビュー掲載! https://t.co/XfokszzQbw 約2ヶ月前 replyretweetfavorite