パリで生きる日本人女性にインタビュー
前回のパリジャン十色では、日本には、他人や社会の基準にとらわれる「呪い」にかかっている人たちがいること。そして同時に、それに気がつきはじめている人が増えている、というお話をさせてもらいました。そして、「生き苦しさ」の原因となる呪いに気がつき始めた人たちが次にぶつかるのは、「じゃあ、私ってどうありたいんだろう?」という疑問です。
これまで当たり前のように、他人や社会の基準に自分を照らし合わせて生きてきた人にとって、その答えを見つけるのは大変です。これまでの習慣を変えて自分の基準を持って生きるには、自問自答するしかないというのが私自身の経験から導き出した答えになります。
そこで今週からは、十人十色の生き方が溢れるパリで、毎日「私って、どうありたいんだろう?」と自問自答して生きている日本人女性にインタービューし、その具体例を紹介していこうと思います。
第1回目は、40代で離婚をキッカケにパリにやってきたという女性・Aさんにインタビュー。日々自分の生き方について自問自答している彼女は、パリに来てから短い間に、驚く程の変化があったそうです。
離婚をきかっけにパリ来た、40代女性
—— 離婚がキッカケでパリに来たとのことですが、日本ではどのような生活をされていたんでしょう?
Aさん 日本にいて離婚する前は、派遣でOLをしていました。でも、夫に養ってもらっていたところが大きかったんです。それなりに楽しく生活していたんですが、突然、夫に「好きな人ができた」と離婚を切り出されてびっくり仰天。それがちょうど今から1年前のことです。
今回取材に応じてくれたAさん
夫の浮気ももちろんショックだったけれど、「これから1人になってどうやって生きて行けばいいの!?」という不安に突如襲われたんです。それまで、特に何も考えなくても安定していた生活が、離婚でいきなり不安定になり、40代になって初めて「自立」を真剣に考えることになりました。
その時の派遣先の環境は良かったんですが、事務職がそもそも自分に向いていないんじゃないかと思っていて……。だから、これからまた同じような職種で転職や再就職をしたい気持ちや自信も、正直なところありませんでした。
突然の出来事に、悲しみと不安がごちゃ混ぜになって、人生のどん底に落ちたと感じたAさん。しかし、その頃ちょうど夢中になっていたあることで、パニックから抜け出す糸口を見つけたと言います。
Aさん ヘトヘトの精神状態でしたが、ふと、1年ほど習い続けていた刺繍を、本格的にパリの刺繍学校で勉強して、自分が刺繍教室を開くことで自立できるんじゃないか?と考えはじめたんです。
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